初陣
俺は剣を握りしめ、足に力を込め地面を蹴り上げた。すると先ほどまで動かなかったのがウソのように体は軽く、今まで体感したことのない速度で疾走する事が出来た。
ゴブリンたちは俺以上に驚いたようで、最初に対峙した個体には抵抗されることなく、いとも簡単に両断することができた。
「ギャギャギャギャァァァァァアアアア!!」
「なっ!?」
仲間の死を受け一匹のゴブリンが一際大きな叫び声をあげた。村中に響き渡りそうなほどの咆哮だ。
「っさい!!」
驚きはしたものの、耳鳴りくらいしか実害はないため構わず飛び掛かりその首を斬りおとした。
まだ近くには三匹のゴブリンが残っているが、どれも逃げだす気配はなく武器を構え交戦の態度を見せている。普通、圧倒的な力の差を見せつけられた時逃げ出すのが動物としての本能ではないのだろうか?まだ数での有利を感じているのか?それとも威圧感とかそういうオーラ的なものが俺からは感じられず弱そうに見られているのだろうか?
「これで散ってくれれば楽に終わらせられたんだけどな……まぁいいや。今後のために全員俺の経験値に変えてやるよ」
襲い来るゴブリンの攻撃をバックステップでかわし一匹、二匹と首を刎ねていく。高いステータスのおかげで相手の攻撃を見てからでも十分に避けることが出来るので、何匹いようが関係ない。最後の一匹も同じように仕留めようとした瞬間、寒気のような物を感じ本能的にその場から飛び退いた。間一髪。先ほどまで立っていた場所を通り矢が飛び去って行った。
何事かと矢の飛んできた方を見ると、弓を構えたゴブリンが一匹。よくよく辺りを見回すとゴブリンが集まりだしてきている。
増援だ。もしかしてさっきの咆哮はこのためだったのだろうか。
「ふぅ……この数は少しメンドクサイな」
その数およそ三十。おそらく村を襲撃したゴブリンの全てだろう。
魔法でも使えれば一掃出来るのだろうが、生憎とそういうスキルは覚えていないし、この剣にそういった恩恵はついていなさそうだ。つまり地道に一匹ずつ駆除していく必要があるわけだが。
「おっと!」
またも寒気のようなものを感じ一歩後ろに下がると目の前を矢が通り過ぎて行った。
何かのスキルだろうか?まるで矢が飛んでくるのがわかるかのように体が勝手に回避行動をとる。おかげで矢を怖がる必要もなさそうだ。
「さてと……一応聞くけど、お前ら逃げるつもりはないのか?」
「ギャギャギャ!」
「って通じるわけないか」
恐怖は乗り越えた。
攻撃力は十分だ。
速度は上を行く。
飛び道具も怖くない。
やることはただ一つ。この剣をふるうだけだ。
「さぁ、ここから先はただの蹂躙だ」
俺はゴブリンたちの行いをそのままやり返すべく大地を蹴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます