第3話

桜井さくらい 亜深あみ

年齢:30歳

彼氏:既婚

攻略難易度:E

職業: 人妻(主婦)

居住地:現レベルでは不可

電話番号:現レベルでは不可

攻略情報:30歳主婦である彼女。夫とうまくいっていない。夫に内緒でクラブに通うのが趣味。子どもはいない。不倫相手多数。


出てきた情報には驚きの連続だった。まず年齢からびっくりである。年がいっているとしても20代後半と予想していたが30代だなんて。それに人妻だったのか。結婚しているとは思いもしなかった。手に指輪もしなかったから。人は見かけによらないという昔のことわざが思い浮かぶ。


桜井さくらい美貌びぼうやスタイルはコンビニアルバイトの女よりもかなり上だ。しかし彼女はコンビニアルバイトの女とは違い、スカウターに攻略情報がでてきた。つまり、スカウターに攻略情報が出てきたということは、美貌やスタイルは全く関係がないという意味になる。美貌で攻略できるかどうかを判断するのは無駄であろう。


まあそれはいい。[スカウター]で確認して、とにかく攻略情報が出てくる女に接近すればいいのであって特に難しいことではない。それに、難易度がEならレベル1でも挑戦が可能に思える。ただ、問題は攻略方法だ。情報が出てきたのはいいが、あの情報だけで、一体どうすればいいのかがわからない。

ナンパ? あの女を? かなりの男好きに見えても俺にはハードルが高そうだ。

それでも何か挑戦をしてみることで攻略の方法に関する糸口が見えてくるはずだ。じっとしているだけでは何も解決できない。


しかし、言葉は簡単だ。何をどのように攻略すべきなにか全くわからなかったので、一旦家へ引き返した。むやみに口説くどいては失敗する。


明らかなのは攻略のためにはアイテムを利用しなければならないということ。個人的な能力では接近することすら難しそうだ。そこで浮かんできたのは[アイテム]の存在意味だった。


[アイテム]は当然攻略に使うために出てきたはず。勿論もちろん、その中には策略アイテムもあるだろうけど。しかし、それを恐れて[アイテム]の購入すらためらっていては本当になにもできない。


結局頼れるのは[アイテム]だけ。[Lv.1 スカウター]にこのゲームが女を攻略するのを目的とすると出てきたように。それならば、他の[アイテム]にも何かの手がかりがあるはずだ。

俺は[アイテムショップ]に指を運んだ。


目録にある[アイテム]をとりあえず全部購入するつもりで。勿論、[外車]と[国産車]は除くが。買いたくても買えない。そうなると購入目録は[睡眠スプレー]と[万能キ―]、そして[カメラ]だ。


根こそぎ買うつもりで指を動かした。馬鹿にできない金額だったため[ゲームウインドウ]を操作する指がかすかに震えた。それでも強行した。


すぐに操作は完了した。おそらく一瞬で95万円ものお金が消えてしまっただろう。


購入してみると 、[睡眠スプレー], [万能キー], [カメラ]は[Lv.1スカウター]のように実物が出てくるわけではなかった。現実感が限りなく落ちる。 [アイテム]の存在自体が非現実的ではあるが。


とにかく、購入は終了していた。いざ確認タイムだ。俺は [所持アイテム]へと入った。すると新たに追加された[睡眠スプレー]と[万能キー] 、そして [カメラ]が項目に出てきた。期待と心配が半分ずつ入り混じった気分で再度ウインドウを操作すると、目の前に各[アイテム]に関する詳しいメッセージが現れる。


[睡眠スプレー]

[その名の通り睡眠スプレー。強力な性能をほこる。]

[アイテムウインドウでタッチしておいた後、対象を見つめればOK。]

[持続時間: 1時間]

[使用可能距離: 1M]


[万能キー]

[どんなドアでも開けることが出来る。]

[希望するドアの前に立ってウインドウをタッチすれば使用可能]

[使用回数: 6回]

- 再購入をしても回数は変わらない。

- レベルが上がった後、再購入によって回数の回復が可能。


[カメラ]

[透視とうしカメラ。どんなものでも撮ることができるカメラ。]

[使用をタッチして撮りたいところを視界に置き、まばたきすればOK。]

[使用回数:3回 ]



[睡眠スプレー]と[万能キー]は名の通り。[カメラ]も名前通りではあるが、全く想像もしていなかった透視という能力がついていた。おかげで何か得した気分だとでも言おうか。ただ、[万能キー]と[カメラ]には回数制限があることがひっかかった。


とにかく、こんなアイテムが存在することはまさか。

急に好奇心が心の中で揺動ようどうした。


[万能キー]で侵入して[睡眠スプレー]で眠らせる。

面白そうではないか。そのために出てきた[アイテム]なのではという考えが頭の中を占領した。つまり、女を攻略するということはセックス?


-ドキドキ

女性関係のないこれまでの人生を振り返ってみるとさらに胸が騒いだ。

どう考えてもこの[アイテム]の存在理由は、今頭の中に浮かぶ淫乱な考えを可能にしてくれるのでは。

もしそうならば、どえらいゲームだ。

確認してみたくなった。俺のこの考えが合っているかどうか確認が必要だった。

攻略の条件が何かを探らなければならなっただけに、これは間違った考えではない。そんな言い訳をしながら押し寄せてくる背徳感はいとくかんに唾をごくりと飲み込んだ。


それから俺は彼女の家へと走った。犯罪であるということを知っていながらも[アイテム]が作り上げるファンタジーに道徳だろうが倫理だろうが構わず、まるで取り付かれたように体は動いていた。[スカウター]に家の住所は出てこなかった。だが、関係ない。最初からどこに住んでいるのかを知っていたから。


急いで階段を駆け上る。廊下を走って彼女の家の前にたどり着いた。ドアの前に立って俺は[アイテム]を読み込んだ。


[万能キーを使用しますか?]


すると、目の前に出てくるメッセージ。手がやけに震えてきた。緊張が半端じゃなかった。やってはならないことだという事実がさらに俺を煽った。まるで背後に悪魔でも立っているかのようであった。


メッセージをタッチすると、すぐにウインドウは消えた。目立った変化はないようだった。ドアノブをつかんでドアを開けてみる。すると、なんの抵抗もなくドアが開き、俺は家の中に入れた。そして、忍び足で歩く。靴を脱ぐのも忘れ、家の中に乱入した。テレビを見ていた桜井さくらいは人の気配を感じたのか俺の方を見た。すぐさま彼女と俺の視線はぶつかった。


-キャーァア!


今にも耳の鼓膜こまくが破れそうな大きい悲鳴が響き渡った。俺を避けて逃げようとする彼女。持っていたリモコンを俺に投げつけると台所に向かって走った。俺はそんな彼女に慌てて飛びかかってしまった。そして、[アイテム]を読み込む。


「強盗だあぁぁあ!」


大声で叫ぶ彼女の前に現れたのは[アイテム]ではなかった。急に身体に異変を感じた。自分で自分の身体を動かすことができない。視界も白く変わってしまった。時間が止まってしまったのだ。当然、桜井さくらいの動きも止まった。この状況は一体何だ。かなり焦る。なんだろうと思い目をぎょろつかせる俺の前に急に2つの選択ウインドウが現れた。

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