ホットミルク

てつ

第1話

僕は小さい頃、時々家に親がいなくなるときは近くの祖父母の家に預けられていた。

そのとき、祖母がいつもレンジで温めたホットミルクを作ってくれたのをよく覚えている。

子供が苦手な祖母だったが、精一杯気を使ってくれていたんだと思う。

でも幼い僕は牛乳は冷たいものだと考えていた。牛乳とはキンキンに冷やしてガラスのコップで飲むものだと。

その当時の僕には、目の前に置かれた、マグカップに入って湯気を立てているあったかい牛乳をどうしても受け入れることが出来なかった。出してくれた祖母に悪いと気を使って、一口飲んでみてもやっぱり駄目だった。

冷たいはずの牛乳が温かいという違和感にどうしても耐えられなかった。

今となってはなんて生意気なガキだろう、と思う。好き嫌いが多いやつは良くないぞ、と。

祖母が亡くなってしまっている今、あのホットミルクを飲むことは出来ない。

いつか飲めなくなると分かっていたなら、無理をしてでも飲んでいたかもしれない。

過ぎ去った過去を後悔しても仕方がない。でも、小さい僕に会えるなら、これは温かい牛乳じゃないよ、ホットミルクなんだよと言ってあげたい。

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ホットミルク てつ @iroN37

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