第227話 剣神ヤマトと闇の殺し屋イブキ

Sランク冒険者『剣神』ヤマトの愛刀クトネシリカが、一閃し影を斬る。


草薙に抜刀した居合い斬り。


「ぬぅ、何者だ!」


素速く退いたはずの、半透明に浮かぶ黒装束のスペクターアサシンの左腕が斬り飛ばされていた。


「Sランク冒険者ヤマトだ!その程度の腕で辺境伯を殺せると思うなよ」


「『剣神』か!物理攻撃無効のはずの我が斬られるとは・・・」


「この愛刀クトネシリカに斬れぬものは無い」


「くっ、勝負はまたの機会だ」


壁を擦り抜け逃げる黒い影。


コーン!!


『剣神』ヤマトは、愛刀クトネシリカを、壁に向かって袈裟斬りに斬り落とす。


壁まで距離があり、クトネシリカの刃は届かない間合いなのだが、壁に映る影が袈裟斬りに斬られた。


「ぐああああああ!!」


壁から半透明のスペクターアサシンの死体が浮き出て倒れた。


「儂の刀からは逃げられんよ」


『剣神』ヤマトは納刀し居城を進む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


巡回中の騎士を殺しながら、黒い影が2体居城を進む。


そこに女性が5人が近付く。


影が女性2人の首を斬り、首から血が流れる。


しかし、女性は倒れず悲鳴も挙げず、無表情で影を見詰める。


「ぐひひ、スペクターか、ちょっと厄介だな」


女性5人の後方に現れたSランク冒険者『闇の殺し屋』イブキ。


女性5人は常人とは思えない速さで、ナイフを使いスペクターアサシンを攻撃するが、ナイフは擦り抜ける。


「人形か、この程度の攻撃は効かんぞ」


スペクターアサシン2体は、イブキに襲いかかる。


「ぷぷぷ、手ぶらでこの場に現れると思ったか?」


ガッシャアアアン!!


イブキが手に持つ玉を、影が映る床に叩き付けた。


閃光が割れた玉から廊下中に一瞬の内に拡がる。


スペクターアサシンの身体が溶ける。


「くぅ、聖属性の魔法かあああ!」


「やれ!」

イブキが女性達に指示すると。


女性2人が、それぞれスペクターアサシンに抱きつく。


ドカアアアン!!バアアアアン!!


スペクターアサシンは透過する為、抱き着く事は出来ないが、身体が重なった位置で、女性が爆ぜた。


女性と共に、スペクターアサシン達は、細切れにちぎれ飛ぶ。


人形と化した女性の肉片も飛び散る。


イブキの前には、影の障壁が広がり、爆風と肉片を防いでいた。


「ぐひひ、1人1殺の自爆人形だよ。ぐへへ」


女性3人が無表情で立っていた。


イブキはハッとして振り返り、飛び退きながらナイフを翳す。


キン!!


金属同士を打ち付ける音が響く。


「む、スペクターでは無いな」


何も無い空間を睨むイブキ。


「ちっ、ばれてたか」


何も無い空間から声がする。


透明人間インビジブルマンか!厄介な」


タッタッタッタッタ。


足音が遠ざかる。


「ちぃ、逃がすか!追え!」


イブキは女性人形に指示すると、女性人形の後ろから透明人間を追う。


しかし、廊下の灯りと灯りの間の影に差し掛かった時、闇の触手がイブキを拘束した。


「んぐ!な、何だ!俺が探知出来ない物があるとは、ぐふぅ・・・」


狼狽するイブキの心臓に闇の槍が突き刺さり、身体から力が抜けて、触手が消えると亡骸が床に倒れる。


先を走っていた女性人形3人も崩れ落ちた。


「探知者は殺す事にしたにゃ」


闇の触手が出た闇から、ケット・シーのペロの声が聞こえた。

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