第226話 魔王軍の暗殺者

城塞都市ゲルフにあるロヤスゲ辺境伯の居城。


深夜、闇に紛れて蠢く影。


城門前にはフルプレートアーマーの門番が2人、長槍を持って警戒していた。


「なんだか今夜は、月の光が暗くないか?」


「そうだな。松明の薪を足しておくか」


1人の門番が槍を立て掛け、松の薪を松明に焼べる。


その姿勢で固まる門番。


「どうした?」


もう1人が槍を構えて近付く。


「んぐっ・・・」


バタッ!


くぐもった声を出し倒れる門番。


ピュウウウウ。


首より血を噴き出していた。


「おい・・・、ぐふっ・・・」


バタッ!


ピュウウウウ。


近付いた門番の首からも血が噴き出して倒れる。


「呆気ないな」


何も無い空間から声がする。


「人族の門番など、こんなものだ」


黒い影が答える。


黒い影は、閉まっている城門の扉を擦り抜けた。


城門の中に入った影は5つ・・


黒装束に身を包む半透明のモンスター達。


スペクターアサシン。

亡霊モンスター上位種スペクターの中でも、暗殺に特化した個体。


壁を透過出来る身体は、いかなる場所にも侵入可能。


影に潜み、隙を狙い、闇に溶け込む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ロヤスゲ辺境伯の護衛達の控えの間では、4人の男達が椅子に座っていた。


「くくく、お客が来た様だぞ」

黒装束のSランク冒険者『闇の殺し屋』イブキが立ち上がる。


「流石イブキ、探知技術は最上だな」


騎士隊長である聖騎士カイトはイブキに声を掛けた。


閉じていた目を開き、腰に差した愛刀クトネシリカに手を触れるSランク冒険者『剣神』ヤマト。


左手に愛杖カドゥケイスを持ち、立ち上がるSランク冒険者『賢者』ツバサ。


「俺は念の為、閣下の元に向かう。迎撃は任せたぞ」


盾と短槍を手に立ち上がる騎士隊長カイト。


「任せておけ」


『剣神』ヤマトは窓を開け飛び降りた。


「さあ、行くぞ!」


騎士隊長カイトは立っていた騎士隊の部下数人を伴い部屋を出る。


「さて、俺も行こうかな。うひひ」

『闇の殺し屋』イブキも姿を消した。


部屋に残った『賢者』ツバサは目を閉じて、愛杖カドゥケイスに魔力を込めて、魔力探知の魔力を薄く広げていった。


「侵入者は6人・・か・・・」


ツバサは独り言を呟く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


居城に侵入したスペクターアサシン達。


影が居城を移動し、巡回していた騎士達を次々に殺していく。


「こんな奴等を殺せなくて、俺達が呼ばれたのか?」


「いや、厄介な奴等が4人居るらしいぞ」


「ふん。人族如きに遅れを取るものか」


2体の影が会話をしながら、ロヤスゲ辺境伯のいる折檻部屋に向かっていた。


一方、居城の入口に立つ『剣神』ヤマト。


愛刀クトネシリカに右手を添えて、右足を半歩前に出し、半身で構える。


入口の床には影1つ。

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