第158話 学園都市の闇

エリとハルカは冒険者ギルドから出た後、食材を購入する為商店街に来ていた。


「おー、この肉は初めて見るなー。ねえねえ、これは何の肉?」

ハルカは食材の吟味に夢中だ。


料理をあまりしないエリは、そんなハルカの様子を見るともなく見ていた。


すると、眼の端で何かが動くのが見えた。


小さい女の子。


魔力が無い女の子。


汚くボロボロの服で怯えながら物陰に隠れる。


そこに先程軟派してきた学園生達が駆けてきた。


「何処に行った?」

「こっちに来たと思ったがな」

「おい、姉ちゃんここに汚い魔抜けの女の子が来なかったか?」


エリに後ろから問い掛ける。

振り向くエリ。


「げっ、怖いおばちゃんだ!」

「おい、それは・・・」


「お、お・ば・ちゃ・ん・じゃと!」

エリは怒りまくる。


鉄拳が男の顔をとらえる。


「ぶほっ」

頬が赤く腫れ上がる。


「何しやがる!俺達学園生に手を出した挙げ句に、魔抜け狩りまで邪魔しやがって」

身構える男。


「どんな冒険者か知らないが、学園を敵に回しても良いんだな!」

指を差して睨む男。


「レディを捕まえてババアとか言う奴等に、手加減は出来んのじゃああ!」


魔神パズズであるバズの風が吹き、強力で濃厚な魔力が吹き荒れた。


「ひ、ひぃ」

頬を殴られた男は手で頬を押さえながら怯えて、口答えした男達は腰を抜かす。


「ヤバイよ」

「逃げるぞ」

周りの男達は腰を抜かした男を抱える。


「ただじゃ置かないのじゃ!」

エリは一人の男を蹴飛ばす。


「ぶへっ」

「ひぃ」

「逃げろおおおおお!」

男達は逃げ出した。


エリは女の子を振り向きしゃがみ込み、目線を女の子に合わせる。


「こっちに来るのじゃ」


女の子は驚き怯えて顔だけ出している。


「何もしないのじゃ、心配しなくても良いのじゃ」

エリは手を伸ばして優しく女の子の手をとる。


「妾はエリじゃ。名前を教えてくれんかのぅ」


「ノノ・・・」


「ノノか、良い名前じゃ。この指輪をあげるのじゃ」


エリはノノの指に魔道具の指輪をはめた。


「この指輪の魔道具は魔力がある様に見える指輪じゃ。これでノノは魔抜けとは分からないのじゃ」


「え!」


「お姉さん達と一緒に行くよー」

その様子を見ていたハルカ。


「・・・」

下を向いて押し黙る少女。


「お腹が空いてない?美味しい物をいっぱい食べさせるよー」


「美味しい物?」

顔を上げた少女。


エリとハルカは優しく微笑む。


エリとハルカは両手を繋いで少女を拠点に連れて来た。


ノノを食堂の椅子に座らせて、ジュースを飲ませる。


その間、ハルカは食事を作り皆で食事を食べた。


ノノはよっぽどお腹が空いていたのか、怯えながらも一心不乱にガツガツと食べていた。


食後に一段落して、ノノから聞いた学園都市の裏側。


魔力偏重主義の学園都市では魔力の無い魔抜けは人間扱いされず最低の存在。


それは他の国でも同じなのだが、学園都市では、対人戦の度胸をつける為、学園の卒業時と冒険者のランクアップ試験で魔抜けの人を殺す。


その為に学園都市内で魔抜け狩りを行う。

また、人数が揃わない場合は他の国から魔抜けの奴隷を買い集める。


買い集めた奴隷を学園の地下に閉じ込めて生活させていた。


「くっ、ここまで遣るか・・・」

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