第123話 『猿神』

俺は、冒険者ギルドマスターである牛獣人『牛鬼』のゴウケツを暗殺し、屋敷に戻った。


冒険者ギルドは、マスター失い、冒険者の数も大幅に減らした事で、以前と同じ様に依頼は受けられない。


ハーピーのハルカの仇である虎獣人の『白虎』と兎獣人の『玉兎』が王都に戻るまで、まだ間がある。


それまでの間、エリとハルカの冒険者組とダルアが、魔抜けの人達を教育しながら、冒険者の替わりに依頼をこなす事にしている。


依頼はニャルマル商会経由だ。

冒険者ギルドはノータッチ。


俺は空いた時間で魔抜けの人達に『気』の指導をしている。


魔力の無い人達は気功を覚えるのが、割と早い。


エリ達と依頼をこなしながらレベ上げも進んでいる。


そんな中で毎晩闇ギルドの暗殺者が、屋敷に侵入しようとして、ヌエのライヤと空狐のクーコに狩られている。


ある日、訪問者が現れた。


闇ギルドの猿獣人。


「我が主が、話をしたいとの事です。ご足労願えないでしょうか?」


猿獣人の男が丁寧にお願いしている。


「用があるなら、そっちから来い」


毎日暗殺者を送ってくる抗争中の敵の本拠地に、何の保障も無くノコノコ行く馬鹿なんていないよね。


用件も聞いてないんだよ。


「後悔されるなよ」


「お前、俺達を舐めてんのか! 抗争中の相手に何か伝えたかったら、ボスが菓子折でも持って詫びに来い。話はそれからだ。キャルを誘拐した事も許したわけじゃないぞ」


と言って追い返したら、後日先触れの後、闇ギルドマスターである『猿神』が、屋敷に来た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『猿神』は猿人が黒を基調とした貴族服を着ていた。


背筋が伸びて姿勢が良い。


「今までの事は水に流そう。これからは、お互い不干渉とする事でどうだ」


低音で落ち着いた声。


「はぁ、毎日暗殺者を送り込んで、俺達を殺そうとしておいて、水に流すだ、ふざけた事を言うなよ」


「おいおい、うちのメンバーがかなり殺されているんだ。それを手打ちにしてやると言ってるんだぞ、お前等には死んだ奴はいないだろう」


「殺しに来たんだ、弱ければ殺されるのは自業自得だろう。それより人員が減って殺しに来れなくなった割に、上から目線で強気だなぁ。俺は手打ちにしなくても、何の問題もないぞ」


「闇ギルドを甘く見るなよ! この国の人員が減っても、他国から呼び寄せる事だって出来るんだ」


「んじゃ、呼び寄せれば良いだろう。俺達は何時でも受けて立つ」


「・・・」


しばし無言の時。


『猿神』は諦めた様だ。

「ふむ。謝れば良いのか?」


「最低限詫びが無ければ、話すつもりも無い、話はそれからだ」


「分かった。今までは済まなかった。これは今回のお詫びだ」


ジャラッ。


『猿神』は大きめの布袋をテーブルに置いた。


金貨が入っている。

神眼で鑑定したら千枚あった。

1千万円か。

金はいっぱいあるからそれ程欲しいとも思わんが。


布袋には手を着けず。


「で、水に流して欲しいと言う事か?」


「正直、この国の闇ギルドのメンバーで、戦闘出来る者は極端に減った。あんた達を暗殺する余裕が無い。水に流して貰いたい。この国の闇ギルドはあんた達には一切手は出さない」


この国・・・の?」


「うっ。分かった。この大陸・・・・の闇ギルドは、あんた達に今後一切手を出さない様に話を付ける」


「良いだろう。手打ちだ」


キャルを攫って、暗殺に来た奴等を見逃すのは、甘々だとは分かってるが、この国で魔抜けの人達が暮らすので、心配ではあったんだよね。


俺達がいる内は良いが、旅だった後で、クーコとライヤは残すけど、依頼中等襲われる危険があるからね。

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