第116話 狐火

『殲滅の旅団』の拠点に殴り込んだ俺達。


ホールで酒を飲んでいた冒険者達は武器を抜いて構える。


前衛の冒険者は鉄の盾を構える。


後衛の弓使いは弓を構えて、魔道士はファイヤーボールの詠唱を始めた。


盗賊、暗殺者等の冒険者達は、身を隠して左右両サイドから駆けて来た。


気配でバレバレですよ。


獣人国1番の冒険者クランだけあって、連携はそこそこ出来る様だ。


「ここはウチに任せて!」


空狐のクーコが前に出て来た。


「お、おう。任せた。」


クーコの実力を見せて貰おうか。


「狐火召喚!」


召喚? 狐火は魔法じゃ無いのか?


数十の狐火が展開された。


冒険者達と同じぐらいの数だ。


狐火はファイヤーボールに向かって飛んでいく。


ファイヤーボールと狐火がぶつかると、ファイヤーボールが消えて、狐火の火力が上がる。


狐火はそのまま魔道士達の元に飛んでいく。


魔道士達は慌てて、薄い透明な水色の魔法障壁を張る。


無詠唱なので魔道具使用かな。


狐火は魔法障壁の前で停止した。


「・・・」

「はぁ!」

「そんな馬鹿な!」


魔道士達は目を開き唖然として驚く。


ファイヤーボールと狐火の形はとても似ているし、大きさも殆ど変わらない。若干狐火の方が大きい程度。


魔道士達はファイヤーボールが放たれたと思ったのだろう。


ところが狐火はファイヤーボールと相殺されず、寧ろ吸収して威力を増して飛んで来た。


あげくの果てに、魔法障壁の前で停止したのだ。


そりゃあビックリするわな。


その後狐火はあろう事か、魔法障壁を迂回して魔道士達に直撃。


通常ファイヤーボールは敵に当たると、燃えて暫くすると消えるのだが、狐火は燃え続ける。


別の狐火は盾を構えた冒険者達に向かって飛んでいき、魔法障壁と同様に盾を迂回し、冒険者達を燃やした。


「うおお」

「そんな馬鹿なあああ」

「助けてくれえええ」


盾を構えた冒険者達は叫び転がる。


他の狐火がその後ろで剣を構えた冒険者達にも、飛び当たり燃やす。


一部の狐火は、左右に飛んでいき、身を隠して迫って来た冒険者達も燃やした。


弓使いにも狐火が飛んでいくが、弓使い達は狙いを俺からクーコに替えて、矢を放っていた。


「管狐召喚!」


クーコが叫ぶと、クーコの前から狐の顔をしたロープの様な管狐が伸びていく。


管狐は矢を絡め取る。


矢を放った後の弓使いは狐火で燃やされる。


あっという間に冒険者達は燃やされた。


そして、驚く事に燃やし終わった死体から狐火が戻って来た。


「クーコ、狐火と管狐って魔法じゃ無いね。もしかしたら眷族?」


「そうやねん。魔法では無いねん。ウチの可愛い眷族やねん」


そうかぁ。自動追尾機能で一度出したら何度も使えるって言うことだな。


これもチートだね。

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