第100話 猿の獣人

エルフのエリと雪女のユキが冒険者ギルドに向かった頃、俺と黒猫のケット・シーであるペロは街中を歩いていた。


ペロは俺の影に潜んでいるので、1人で歩いている様に見える。


「情報を集めるのは酒場かね?」

「そうだにゃ。やっぱり酒場が良いと思うにゃ」


「でも酒場は、夕方過ぎじゃ無いと客がいないだろう」

「それもそうだにゃ」


と言うことで、先ずはニャルマル商会に向かった。


ここに来る途中で倒した魔物の素材を買い取って貰うのだ。


ニャルマル商会も猫の獣人が店員をしており、俺の名前を告げると分かってくれて素材を買い取ってくれた。


猫の王国にいたシャルさんから指示があった様です。

流石シャルさんです。

抜かりは無いのですね。


その後、街中をうろうろ。

一応、聞き耳を立てて人が多そうな所を回って情報収集だ。


そんな時、最近無意識でしている気配探知に違和感があった。

「つけてくる奴等がいるな」

「本当にゃ。5人だにゃ」


「人通りが無い細道に入るね」

「了解だにゃ」


俺は人がいなそうな細い道に入った。

そして気配を消す。


丁度行き止まりになっていた細道。

駆け足の足音が後ろから聞こえる。


気配を消して道の端にいた俺の目の前を、5人の男達が通り過ぎる。


「む、いないぞ!」

「何処に行った?」


5人の男達はキョロキョロ。

全員黒の上下の服。

手にはナイフ。

5人全員猿の獣人だった。


「俺に何か用か?」

俺は細道の中央で通せん坊する様にして、気配を現した。


「な、何で後ろに!」


「魔抜けの癖に生意気な」

5人の内の1人が姿勢を低くして、ナイフで俺の足を水平に斬り払う。


俺は半歩後ろに下がって躱す。

「いきなり足を斬ろうとするか?」


「魔抜けの癖に躱しやがったな」

足を斬ろうとした猿の獣人。


「魔抜けごときは手足を切り落としてから、尋問すれば良いからな」

後ろでセンターにいたリーダーの様な猿の獣人が喋り始めた。


「なぜ、俺が魔抜けだと思った?」


「ははは、鑑定防止の魔道具を付けてる様だが、魔力探知をすればすぐ分かる。魔力が無い奴は魔抜けだ」


「成る程、そう言えばそうだな。それは想定してなかった」

魔力探知でバレるのかぁ。


後でエリに相談して魔道具で解決して貰おう。


「まあ、後は拘束してから色々聞こうか、手足は斬っても良いぞ、やれ!」


4人の猿人達が飛びかかって来た。


1人は下から、2人は両脇の壁を伝って左右の横から、もう1人はジャンプして上から。


「ペロ、4人は任せた」

「了解だにゃ」

俺は気配を消して、4人に構わず1人残ったリーダーに向かった。


俺の影からペロが現れ、影槍が4人の猿人に突き刺さる。

同時に闇の触手で拘束した。


俺は気を纏い、一瞬でリーダーに接近する。


リーダーはその速度に驚きながらも、腰を落とし、ナイフを突き出す。


俺は突き出されたナイフを持つ右手を、左手で押さえながら背後に回り込み、右手で首を絞めながら『生命力吸収ライフドレイン』を行う。


「ぐぇっ」

首を絞められ生命力が微小になった猿人が苦しむ。


「質問に答えろ!お前達の所属と名前、目的を教えろ!」

俺は威圧を込めて質問した。

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