第83話 氷の精霊にあった

妖精達を気絶させた俺達は、異世界から召喚された精霊に会うために、次の目的地を目指す・・・。


妖精達のリーダーに聞いたところ、目的地は2つ。


北の凍った都市。

そこには氷の精霊が居る。


妖精国西の都市。

そこには炎の狐の精霊が居る。


「エリ、どっちから行った方が良いかな?」


『疾風』エルフのエリは即答。

「北に行って西じゃな。

最初に西に行くと、妖精国を横断する必要があるので、面倒事に巻き込まれそうじゃ。

妖精国の外周を北回りで半周した方が良いじゃろぅ」


「成る程、そのルートで行こう。ところで、妖精達こいつらをこのまま此処に放置する訳にもいかないから、連れて行くか」

俺は気絶した妖精達を見る。


「そうだにゃ。此処に放置すると魔物に喰われるにゃ」

黒猫のケット・シーである闇魔法使いのペロが、闇の触手で妖精達を一纏ひとまとめにした。


「ドラムは俺とダルアとペロ、

妖精達を乗せてくれ」


ドラゴンのドラムは、小鳥サイズから象サイズになった。

「これぐらいの大きさで良いか?」

「そうだな。それくらいで良いだろう」

俺とダルアとペロは、ドラムに飛び乗った。


エリは魔神パズズのバズの背中に乗り、『風刃』ハーピーのハルカは、子犬サイズから馬サイズになったヌエのライヤに乗る。


出発しゅっぱーつ!」

ダルアが右拳を上げた。


北の都市に向かって行くと、だんだん寒くなっていく。


「雪が降ってきたよー」

ダルアがてのひらを上に向けると、雪が落ちて溶ける。


「寒くなってきたにゃ」

ペロは身震いしている。


「これが雪かぁ。僕は初めて見たよ」

ハルカは興味深げに雪を見る。


「これ以上寒くなる前に、妖精達を解放した方が良いかも知れんのじゃ」


「そうだな。ここいらで妖精達こいつらは、近くの町に置いていこう」


「ちょっと行って来るにゃ」

ペロは『闇猫』の二つ名を受け継いだ闇魔法のスペシャリストだ。


影に潜み、闇に身を隠す。

隠密、偵察はお手の物。


ペロが魔力を隠して、近くの妖精の町に気絶している妖精達を置いてきた。


「ついでに町で、情報収集をして来たにゃ。氷の精霊はこの先、北の凍った都市にいるそうにゃ」


「有難う。流石『闇猫』だ」

「照れるにゃ~」


「急ごう」


しかし寒いよ。

北の都市に近付いていくと、雪の降る量も増えてきた。


ドラムとバズとライヤは、寒さにも強そうだ。


ハルカは羽毛で暖かそうなのに、風魔法で雪が当たらない様に調整している。


エリもバズの風魔法で、暖かい風を周りにまとい、寒く無さそう。


ペロは俺の影に隠れた。


ダルアが俺の背中から抱きついてきた。

「寒いよー」


問題は俺とダルアだな。


俺は気を身体全体に循環する。

うん。暖かくなってきた。


「ダル、気を全身に循環させてみな」

「うん」

ダルアは全身に気を循環させた。

「お、暖かくなって来たよー」


急に吹雪きになった。

前が見えない。

ホワイトアウト。

雪嵐が吹き荒れる。


「バズ!視界を確保だ」

バズの周りに纏う暖かい風が、俺達の周りに吹き雪を妨げ、雪が来ない空間を作り出した。


「来るぞ!」

前方から、濃厚な気配が近付いて来た。


ホワイトアウトの雪嵐の中から、

黒髪、和服。白装束の女性。

地面のすぐ上の宙に浮いて、流れる様にスーっと近付いて来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る