第75話 正体不明の魔物の正体

ドラゴンのドラムが正体不明の魔物に腹を切り裂かれうずくまった。


『風刃』ハーピーのハルカは魔物に無詠唱で風刃を放つ。


魔物からも風刃が放たれた。


魔物の風刃は威力も数もハルカを上回り、ハルカは切り裂かれて倒れる。


致命傷にはなっていないが、両手を地に着け戦闘不能の様だ。


『疾風』エルフのエリが矢を放つ。


魔物は風を纏い矢を弾く。


魔物は風になりエリの右手を切り飛ばし狂気の目で吼える。


「グゴガウオウ!」


エリの顔が歪み矢を落とし、左手で右手首を押さえる。


ダルアは脅えて震えながら、ドラムの影で銃を構える。


一瞬の出来事。


レベルアップし強力で頼りになるはずの仲間3人が戦闘不能になっていた。


ペロが魔物の影に移動し闇の触手で拘束した。瞬間魔物の動きが止まる。


俺は踏み込み、魔物の背中に左掌を当て生命力吸収ライフドレインを行う。


「グゥアゥ!」


魔獣がうめく。


魔物は動きが鈍くなるが、魔物の身体から風刃が放たれ、闇の触手を切り払い魔物は風となり拘束を抜け出した。


俺とペロも風刃で切られたが、生命力吸収ライフドレインが効いていたのか、風刃の威力は弱く骨までは達していない様だ。


俺とペロは全身から血を流す。


ここで決めないと反撃が怖い。


咄嗟に右手を魔物に向けると、風となった魔物に気功波を放つ。


気功波が風を貫くと風は魔物に戻る。


腹に穴が空いて膝をつく魔物。


狂気の眼光が、瞠目の眼差しに変わった。。


俺は素速く踏み込み魔物の額に掌を当て、渾身の生命力吸収ライフドレイン

そのまま魔物を仰向けに押し倒す。


「ちょっと待つのじゃ」


エリの叫ぶ声。


俺は仰向けに倒れた魔物に馬乗りになって、額に掌を当てたまま、生命力吸収ライフドレインを止める。


「エリ、大丈夫か? どうした?」


俺は魔物に意識を向けながら、エリに尋ねる。


魔物がおかしな動きをしたら、一気に息の根を止めるつもりだ。


「大丈夫、辛うじて命はある。主様が回復してくれるじゃろ? その魔物は精霊じゃ。しかも大精霊相当の存在。何か理由がある筈じゃ」


エリは右手の手首から先が切り落とされたが、左手で押さえながら何とか立ち上がる。


「精霊と言えども仲間を傷付けた! 許せないぞ」


「コ、殺セ。オ前ノ言ウ通リダ。我ハ操ラレテ、沢山ノ者ヲ殺シタ。殺サレテ当然ダ」


魔物は弱々しい声で喋った。


「操られて? 都合の良い言い訳だな」


俺は魔物を威圧する。


魔物は覚悟を決めて、身を任せる様に全身の力を抜いた。


「好キニスルガ良イ」


エリがすがり付く目で俺を見る。


はぁ、しょうが無いなぁ。


「ペロ、魔物を拘束しろ!」


「分かったにゃ」


ペロは闇の触手で魔物を拘束した。


そして魔物から離れると、1番重傷なハルカから気功で治療していく。


ハルカに気を込めて治療する。


「ふう。有難う。僕の風刃より強いなんてショックだよ」


エリに気を込めて右手を再生した。


「主様有難う。なんてスピードの精霊じゃ。妾より速いなんてのぅ」


ドラムの腹の傷はダルアが治療した。


「感謝する。しかし儂の鱗に傷を付けるなんて、信じられん」


ダルアはドラムに抱きついていた。


「ダルを庇ってくれてありがとー」


ペロの怪我も治した。


「有難うにゃ」


自分の怪我も気で回復して、魔物の前に歩いて行く。


迷宮でレベルアップした事と、魔物から生命力吸収ライフドレインした事で、俺とハルカとエリとペロとドラムを治療しても、生命力にまだ余裕があった。


「さて、理由とやらを聞こうか」


「我ノ名ハ魔神パズズ、異世界カラ召喚サレタ」


「パ、パズズぅ!」


精霊って言うか、魔神じゃん。


「コノ世界ノ精霊ニ該当スル。召喚ト同時ニ魔族ニ洗脳サレタ。精霊ノ泉の主デアル風の大精霊ヲ倒シ主ニナリ、精霊達ヲ魔王ノ配下ニスル様ニ言ワレタ」


「それが何でこんなところで暴れている?」


「風ノ大精霊ヲ倒シテ、泉の主ニナッタ。次ハコノ周辺ノ都市ヲ配下トスル様ニ言ワレテ、配下ニシタ精霊達と都市ヲ襲ウ為ニ偵察中ダッタ」


「はぁ? 風の大精霊を倒しちゃったのかよ!」


「ウム」


『うむ。』じゃないよ。全くもう。


偵察中だったから、見つかったら見つけた者を殺してたのかな?


風の大精霊を倒したって事はそれなりに強いんだろうな。


「殺すのは止めた。お前エリと契約しろ!そして精霊達に都市を襲うのを止めさせろ」


「分カッタ」


俺はパズズの傷を治療し、エリと精霊契約させた。

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