13幕:人形使いは魔物退治をする 中




 その日は闇夜に星空はなく生暖かい風が町中を包んでいた。

 時折激しく光る一筋の光が縦横無尽に暴れてからはあちこちで火の手が上がっている。


 光線が直撃し倒壊したお店の瓦礫の中を僕とホットルとコルドルや一部の相棒たちでパトを必死に探し出した。

 幸いなことに彼女は小さな怪我はしているけど無事だった。


「ん。奴隷はもう少しご主人様を早く助けにくるべき」


 そして彼女は相変わらずの口調で僕に悪態をぶちまけた。

 その可愛らしい悪態っぷりと予想通りの答えに僕もグリンティアも思わず吹き出したんだ。


「それは失礼しました、、、お姫様。いや第3王女様」

「ん。奴隷の癖に個人情報を抜き出すなんて失礼。死ぬべき」

「いや!!君、僕のプライバシー完全無視だよね!!」

「ほんと。まさか『ちびっこ』が王女様だなんて驚かされるわ」

「ん。召使いの癖に『ちびっこ』言うな」

「「はいはい」」

「シュガール腹減った!!夜飯!!!」


 その時、呆れる僕たちを前に人形屋敷から怒鳴り声が響き渡った。

 その見幕はかなり頭に血が上っているような凄みを僕は肌で感じ取ったんだ。

 でも全く怖くないけどね。

 そーいえば今日の夜ご飯の準備なんか完全に忘れていたんだ。

 いつも通りの変わりないやり取りに何だかさっきまでの色々な恐怖に飲み込まれそうになっていたのが嘘のようだった。


「君も大概ぶれないよね!!」

「ぶち殺すぞてめぇ!!夜飯早くしろや!!」

「部屋の中でイキられても怖みも何もないんだけど」

「てめぇ引き出しに入れてるババァの記録魔石を叩きつけるぞ!!」

「それはやめて!!」


 引き篭もりの癖にいつの間にか人の弱みを握っているとは、、、

 こいつそのアビリティを違う方向にむけろよ。

 それに変なことを言うから本人が悟り始めたじゃないか。

 まずい、、、このままじゃ、、、

 後で膨大な請求書を押し付けられる羽目になる。


「ねぇシュガール、、、ババァの記録魔石って何のこと?それとこのクソ引き篭もりはもしかして私のことをババァとでも呼んでるのかしら?」

「あぁあん?ババァをババァ呼ばわりして何が悪い?15以上は全部ババァなんだよ!!」

「お生憎様、私はこれでもまだ15じゃないのよ!!それにクソニートのロリコンにババァなんて言われたくないわ」

「うそーーっ!?グリンティアってもしかして年下なの?それで元NO.1って凄すぎない?」(シュガール)

「設定上は成人してるもん」

「そうなのか、、、ん?待てよ。僕は、、、ロリコンだったのか」

「あのねシュガール、女の子は見た目も年齢も弄れるのよ」

「僕はロリコン、、、」

「あのねシュガールも同い年くらいなんだからロリコンになる訳ないでしょ。セーフなんだから」

「そうだった、、、ほとんど年齢変わらないんだよね」

「ん。でもこの前、背中を踏まれて喜んでたからアウト」

「変態シュガール!!」

「シュガール飯!!」


「おいそこの人たち早く避難しないと!!」


 緊急時なのに収拾がつかない僕たちに周囲の人たちからの呆れた視線が突き刺さった。

 だから僕は冷たい視線に気づかないふりをしてすぐに臨戦状態に入ったんだ。

 今必要なのは、、、多くの手札。


『人形化!!人形創作!!』


 僕は仲間たちを人形化しつつ周囲にある瓦礫から何からを利用して多くの人形たちをその場に作り出した。

 瓦礫や泥、炎に、水に空気、ありとあらゆる素材を利用した特製の人形たちだ。

 僕一人だけでやれることは限られている。

 でも仲間がいればお互いに助け合えるんだ。


 それが現実を突きつけられ家を追い出され絶望を知ったあの日から学んだことだ。


「パト、グリンティアは手下たちを助け出してから町の人たち助け出すんだ。それから人形屋敷に避難誘導。やり方は任せる!!新しい相棒たちは二人を全力でサポート、それからパトとグリンティアを絶対に守ってくれ。引き篭もりは相棒たちのサポートと全体の指揮を取ってほしい!!それから僕は、、、」

「あぁあん?今からフィギュア鑑賞するんだよ」(我関せずの引き篭もり)

「お兄ちゃんパトからの一生のお願い、、、頑張って!!」(上目遣いのパト)

「あぁぁぁっ幼女萌えですぞっ!!!!お兄ちゃんに任せるですぞぉ!」(キリッとした引き篭もり)

「全くその変わり具合は呆れるわ。そしたらシュガールは、、、?」(グリンティア)

「僕はホットル、コルドルと一緒に奴を倒す。だからグリンティアにパトのこと頼んだよ」

「ん。奴隷の癖にご主人様に指図するなんて生意気!!」(素に戻るパト)

「ちびっこはそんなこと言ってる暇ないからさっさと行くわよ!!まずはオーナーたちを助けださないと、、、シュガール終わったら皆でご飯食べようね」

「ん。美味しい奴が食べたい」


 皆が町中に散らばるのを確認したから僕はまっすぐ山のような何かに突き進んだ。

 目の前に広がりつつある破壊されゆく町を横目で見つめながら僕は思ったんだ。


 絶対、何とかなる何とかするんだってね。




 シュガール(`・д・´)ノ:やり方は任せる!!

 パト(  ̄ー ̄)ニヤリ:ん。任された。

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