4幕:人形使いは運命の出会いをする 上

 僕は今、生きるために冒険者として活動している。


 今日は朝から気持ちがいいほどの晴れっぷりで最高の気分だ。

 あの日以来なぜだか世界が明るく見えるようになった。


 そうそう話が脱線するところだったが、今日は最低ランク専用クエストの中から薬草の採取と薬草を食べる害虫を退治する案件をこなしている。


 町の周りから森林の近くまで広い範囲を手当たり次第採取していく。

 ちゃんと素材に応じて取る部位は決まっているし生え出した若芽や小さなやつはそのまま放置だ。それから一定面積感覚で採取しないままにするものもある。


 今後もちゃんと採取できるようにするためのギルドのルールだ。

 もっとも当たり前のことだけど。


 大カゴ4つほどを毎日繰り返し繰り返し採取しながら途中、害虫を駆除しながらクエストをこなし続けた。だから最近では『草取り人形使い』なんて呼び始める輩も出る始末だ。

 あまりいい二つ名ではないけど気にしていない。

 それよりもそのおかげで僕は結構いい思いをしているんだ。


 あの激闘以来、冒険者や町のお姉さん方からすごく可愛がられるようになった。

 みんなすごく温かな瞳を僕に向けるんだ。

 たまに涙ぐんだ同級生くらいの子もいるし、、、

 なぜかはわからないけど出会うたびによく甘いものや食事の余り物なんかをいただくようになった。

 成長著しい僕としてはすごくありがたかった。


 だから僕は今日もできることをコツコツやって町に恩返しするんだ。


 そうそう日頃の特訓や筋肉乙女との戦闘訓練のおかげで戦闘力も上がったと思う僕だけど、それがすぐにランクアップには繋がることはなかった。


 一つ一つ順序良く力をつけていくことが大事なことだと職員のお姉さんが言っていたのできっと僕には足りないものがたくさんあるんだろう。


 冒険者となってから、毎日クエストの依頼をこなし、空き時間を見て人形ショーや特訓に明け暮れている。

 僕は夢に向かって進んでいるんだ。


 そろそろいい頃かな。

 今日の午前中で町周辺は大方回ったからあとは新しい区画にでも足を運んでみよう。


 そして僕は満杯になったカゴを見渡した。

 一人じゃ持ち運びは無理だな。


 人形たちを召喚し手伝ってもらおう。


 とりあえず昼までに一度納品することにしよう。





 真上から降り注ぐ光が柔らかくて心地いい。

 森の中の木々から漏れ刺す光と適度な優しい風が何とも言い表すことができず僕は背伸びを何度も行った。

 本当の最高の休憩時間だった。


 お腹もだいぶ空いたので僕はそのまま食事を取ることにした。

 誰の視線も気にすることなくのびのびとできる環境は悪くはない。

 納品中にお姉さん方にいただいた手作りのサンドイッチと道中に採取した果物類とキノコが僕の昼のランチだ。


 なんて美味しいサンドだ。

 こんなに美味しいものは食べたことがない。


 生まれて初めて目から何かがこぼれ落ちるのがわかったよ。

 僕は間違いなくお姉様方に生かされているといっていい。(キリッ!!)


 さて昼食後に少しだけ仮眠をとって休んでいる時だった。


「誰か誰か助けてください!!」


 はっきりと聞こえた。

 そう遠くない距離だ。


 女性の声だ。

 それもかなり切羽詰ったように聞こえた。


 僕は仲間たちを召喚し声の方向へと急いだ。


 枝を草むらを切り分け先を進む。

 やがて目の前で魔物に襲われそうになっている親子に出くわした。

 メイド服を着た女性とその彼女に抱きかかえられた小さな子供のようだった。

 どうやら見た目だと親子じゃないようだが、、、女性の衣服が赤く染まっている。


 かなりの出血量だ、、、このままじゃ逃げきれないか、、、


 対峙するのは2足歩行のイヌ型の魔物。


 コボルター


 それも4匹に囲まれている。

 だが『筋肉乙女』を制した僕の敵じゃない!!


 手持ちのショートソード(ローンで買った初心者専用)を手に取り人形たちに陣形を組ませる。

 熊のハニーを先頭に犬のボーンと猫のウイッシュを左右にメイドさんの前に陣取らせた。

 3人は二人の守護役だ。


 そして僕は新たに二人の人形を召喚した。

 僕の右手であり左手である二人の大切な仲間であり大事な相棒。


 そう騎士のホットルと魔法使いのコルドルだ。

 くそ野郎どもに無残な姿にされた二人は修復されついに僕の元へ返り咲いたんだ。

 まさか先日お世話になった女将さんの趣味が手芸だったとは、、、


 ホットルとコルドルは強くなって復活した。

 強く可愛く丈夫なぬいぐるみ人形へと。


 その名もホットルMk-2、コルドルMk-2。

 とても格好よくなった名前の二人が小さく頷いて準備が万端だということを主張していた。


 本当に頼もしい相棒たちだ。


 さぁたかが4匹のコボルターごとき相棒たちと我が名剣シュガールソードの血糊にしててやる!!


------------------------------------------------------------------------------------------------------------



 ホットル、コルドル( ・`ω・´)・`ω・´)ドヤッ:真打は遅れて登場!!



にんじん太郎さん(https://kakuyomu.jp/users/ninjinmazui)のご好意により紹介動画を作成していただきました。


合わせてチャンネル登録もどうぞ。


https://www.youtube.com/watch?v=2Cjy5Owlhf0




ぜひご覧ください。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る