雑記39:『THE FIRST SLAM DUNK』が傑作な理由を考えてみた。
※この記事には映画『THE FIRST SLAM DUNK』のネタバレが多分に含まれます。それでもいい方のみ、当記事の続きをお読みください。
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『THE FIRST SLAM DUNK』
皆さん、もう見ましたか?
まだですか? じゃあこんな記事読まずに今すぐ見にいってきてください。
……まだ残ってる方はもう視聴済みな方ですね?
面白かったですね!!?(゚∀゚)-3(食い気味)
私はもう面白すぎて人生で初、映画館再来場してしまいました!
2回目も泣いたよ! 後の展開分かってるから序盤で泣いたよ!笑
で、まぁ1回目は本当もう「うえぇぇ!? 格好良い!! すごい! なにこれ!? ダメだ、ニヤニヤする…! あぁ、涙が…! でも今は鼻すすれないタイミング…! 堪えなきゃ…! くっ、涙で前が見えない…!」みたいな感じで余裕がなかったので(笑)、上映中にもっかいくらい見ておきたい!と思っておりました。
2回目は7月頭の休みに見にいったんですが、すごいですね。席満杯!小さな映画館ではあったんですが、上映開始からかなりな月日が経ってるのに未だに席が埋まる人気ぶり…。まだ上映終了時期も未定のようです。
で、せっかく2回も見るならなんでこの映画はこんな傑作なんだ?って事も考えながら見直してみる事にしました。今回は先の展開を知ってる状態なんでキャラの台詞とかも考えながら見れるのでね。(ぽちは漫画・アニメの方は未履修です。1回目視聴後にファンの方の感想とかは読んでちょっとだけ知識が付いた状態で2回目見てます。)
で、思ったのが伏線回収盛りだくさんだな!?です。
あと視聴者への気配り(分かりやすくする工夫)もむっちゃやってる!色んなキャラの回想を色んなタイミングで挟んでるけどだれないのは、やっぱ本筋のストーリーと結びついてるから(伏線になってるから)なんですよね。それをとても丁寧に作ってくれてる。
2回見たおかげで1個ずつの台詞も噛み締めながら見れたの良かった。無駄な台詞ないよね…。
以下、思った気付きを書き留めておきます。
①皆大好き王道ストーリーを使ってる
弱者が強者に挑む、という庶民が大好きなストーリー!そんなん絶対応援しちゃうよね!?この流れも素晴らしく、観客席含めて舞台装置が作られてました。
初めは皆「どうせ山王が勝つんでしょ?」ムードから始まる。試合中、ゲーム機で遊んで興味ない子どもがいたりして。→そこから桜木が突如机の上に飛び乗って「山王ぶっ潰す!」と叫ぶ。子どもは興味惹かれて椅子から立ち上がる。会場は調子こいてる桜木に大ブーイング。→試合中に桜木が負傷無視した決死のダイブで客席に突っ込む。そのガッツに客席が湧いて逆転湘北応援ムードに変化。
この辺、リョウタと兄ちゃんのやりとりでもこういう流れだよって分かりやすくされてる。「兄ちゃんは山王に入るの?」「やるなら山王倒す方でしょ!」ってな感じ。
②ほんのちょっぴりホラー的演出。
怖いものとか不気味なものって魅力的なんですよね。世にも奇妙な物語とか、日本人皆好きじゃないですか?怖いもの見たさ、なんて言葉があるくらい昔からある感覚だと思う。
私がホラー演出だ、と思ったのは以下の3シーン。
リョウタの兄ちゃんが船にのって海に向かってくシーン。兄ちゃんの姿を映して、その後ブツッと黒暗転する。え、何この不穏な終わり方…(・ω・;)てなりますよね。
その次が河田がボール持って桜木がガードでゴールに向かってシュート決めようと飛び上がるシーン。無音でジャンプするシーンがスローモーションで流れつつ、河田が「あれ?まだいる…」
最後が敵チームにボール取られて沢北がシュート決めようとした瞬間、沢北の顔ドアップで無音の中で「返せ」と桜木の声だけするシーン。
上2つは相手チームの気持ちになったらぞっとします。笑
③主要メンバー全員が主役はれるくらい作り込まれてる
漫画では桜木、映画ではリョウタが主役やってますが、話のテーマによっては湘北の誰が主役でもおかしくないくらいキャラが魅力的。特にチーム競技の話だから、誰がパスしても抜いてもシュートしても「うぉー!お前って奴ぁ…!」ってなれるのは熱いですよね。笑
またキャラ同士で関係性が変わってくるのも見ていて楽しい。良いプレーが決まった後とか数人だけマッスルポーズ取ってたりして、ここ仲良しメンバーなんだなとか、こいつはポーズしないなとか細かいところでキャラの性格が出てて良かった。(作り込み細かい)
④脇役も魅力的
脇役達も人生というか人となりが見えていいなぁと思った。
山王の先生、席を立ってる描写が多くて生徒に寄り添ってくれるいい先生なんだろうなぁって思った。
安西先生はあまり選手に具体的なプレーの指示出しをしてなくて、「諦めたらそこで試合終了ですよ」という有名な台詞を体現してくれてるなと思った。君らなら勝てるでしょ?って信じてくれて精神的に支えてくれる懐の深いイメージ。
リョウタの母親も本当は試合見にいってるのに、帰ってきたリョウタに「試合どうだった?」とか見にいってないふりしてるのも、高校生とその母親っていう距離感ぽくていいよね。どっちも興味ないわけないのに、お互いに色んな感情見せたり隠したりするのエモい。
彩子さんとの伏線回収も熱い。早めにその伏線張られるの大切。手のひらに何書いたの?あんなの気になるよね。笑 ヒロイン枠だけど恋愛(実際には好きな人らしいけど、そこまでその描写ない)やお色気路線じゃなく魅力的な女性だからなお魅力的だったと思う。(これはリョウタの母親も然り。妹もこの子なりに良い子なんだろうなが分かる台詞あったり、やっぱりキャラが魅力的)
⑤敵キャラも魅力的
正直、強キャラだ!って奴が相手でないと盛り上がれないでしょう。そういう意味で山王って無茶苦茶怖いよね…。プレー中の強さもさる事ながら、嫌な奴らじゃないところがなお、敵として怖いところです。誠実、堅実、努力家、仲間想いそんな隙がない敵怖いじゃないですか。
河田は良い先輩なんだろうなって感じが滲み出てた。桜木の煽りに「ぶっ潰す」みたいな悪役モードじゃなく、素直に賛辞してくれる気持ち良さがあった。
沢北も300段の階段上り下りして地道に努力してる描写があったり、チームとしても個人としても強者だなぁという納得感があるチームだった。
⑥回想シーンがお涙頂戴のためじゃない
リョウタと母親の回想は泣けるシーンですよね…。でもこれらもお涙頂戴のためじゃなく、ちゃんと伏線回収として機能してるのが尚良いところです。
冒頭のシーン、兄ちゃんとリョウタのバスケしてるところを入れる事で誰が主人公なのかここで明確にしてる。「怖い時ほど平気なふりをするんだ」この兄ちゃんの台詞がストーリー全体にかかってくるんですよね。三井とヤンキーに喧嘩ふっかけられても、怖い山王と対峙する時も、リョウタは平気なふりをしてるだけってのが分かる。「試合どうだった?」って母親に聞かれ、「怖かったよ」と答えるシーンエモい。
クライマックス直前、沖縄の家の仏間の前で泣く母親とそれを見守る子ども達のシーンが入る。兄がいなくなって自分が兄の年を追い越して、"リョウタ"が"キャプテン"になってくのを心象風景として見せていく。ここが一番の泣きどころだと思うんだけど、このしんみりしっとりムードから試合に戻ってクライマックスへ…!
⑦感情ジェットコースターと神演出!
特に印象に残るのはクライマックスでしょう。本当、息を止めて見入ってしまうような演出です。
立ちはだかる山王(兄)の壁。兄を超えるような(あるいは精神的なハードルを)突破するような意を込めた描写。ここでバン!と音楽入って感じる高揚感!この感情ジェットコースターはここでは止まりません!
そこからまさかの無音描写。相手にゴールを取られ、あぁ…!とくずおれそうになる絶望感。
いやまだだ!諦めるな!と走りだした瞬間聞こえる軋みのようなノイズと疾走感のある粗い線の描写。選手のなけなしの体力を使ってる苦しさが伝わってくるようだった。
そしてシュートを放った瞬間、タイムアップ。
あとは見守るだけの時間。軋みのノイズも止まってまた無音。そしてここが長い…!(音がないのに全部聞こえるんですよね)
シュートが決まって観客の歓声!じゃないんですよ。次に聞こえた最初の音がハイタッチ!これもキャラ同士の関係性(敵対関係)からの対比になってるの熱いですよね!
そして一気に音が戻ってきて大団円。苦しいクライマックスから解放され、ラストへ向かいます。
伏線回収って気持ち良く決まると本当、エクスタシーを感じます。こういった気持ち良い伏線回収はりまくってるんだからそりゃ面白いよね。
こんないっぱい上手くはれるのがすごいんだけど…。
伏線あると再読する楽しみが増えるんですよ。多分今回の観客の多くも複数回見てそうな気がしたけど、私は再読する価値のあるものが傑作たりえる一つの条件だと思う。
試合後にリョウタが母親に兄ちゃんのリストバンドを渡すのも伏線回収になってます。子どもの頃、兄の遺物を捨てられて母親と喧嘩する描写があったり、試合前の準備中に母親が入ってきて慌ててリストバンドを隠すようにしまう描写が入ってたりします。
本当は怖がりのリョウタにとってお守りだったんでしょうね。母親に取り上げられたくなかったわけです。
それを試合後に母親に渡すのは、もう捨てられる事はないだろう+自分には必要がなくなったから、だと思います。
だから最後もリストバンドがラストカットに入ってるし、最初の方でリョウタの腕アップで兄のリストバンドを付けるシーンが入ってる。重要なアイテムだって分かりやすく示してくれてます。
本当、伏線のはり方も物語を分かりやすくする工夫も無茶苦茶丁寧だなって思いました。
最後、未来に時間が進んで海外での試合のシーンも、相手チームの沢北は高校時代の敗北結果が活きてる台詞をインタビューで答えています。
対してリョウタは相変わらず怖がってて、トイレで吐いてるシーンが入る。
さぁ、伏線回収どうなる?と試合開始したところで終わり!
話(青春)がここまで続いてるなぁと感じます。
誰一人としてエンドロールで立ち上がる観客がいなかったのは、続きが見たい、まだこの世界にいたいと思わせられるからでしょうね(´ー`)
原作・監督の井上雄彦さんは根っからのバスケ好きだそうで、熱意はもちろんあるでしょう。その熱意にも負けず劣らずして綿密な計算も入っているからこその傑作だと思う。
本当に素晴らしい作品です(*´ω`*)
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