メルの旅

@taksh

第1話とある雪山にて

「どうしよう、、、」


そう呟く声が、風にかき消される。

険しい雪山の中、人など訪れ無いような奥地に、1人佇む少女がいた。


「(モタモタしていられ無いな、諦めて早く下山しないと!)」


そう思い、少女は急いで歩き出す。

遠くまで広がる白銀の峰々、一面の銀世界、美しいと思えるその景色だが、次第に曇天が支配する。


そしてついに、風は吹雪に、白銀の世界は完全なる白へと変化する。


「(これじゃ、前が見えない!方向もどっちか分からない!)」


焦る彼女に容赦なく雪が襲いかかる。

それでも、彼女は歩き続けた。

深い雪に足を取られながら、懸命に進んで行く。



一体どれほどの時間が経ったのか。

未だ吹雪は収まらず、ごうごうと音を立て、山を包んでいる。

その中に1人、少女は倒れている。

身体は白く覆われて、顔は雪のように白い。


「(あぁ、もうダメだな私、このまま死んじゃうのかな、、、)」


薄れ行く意識の中で、少女は自分の死期を悟った。もう、指一つ動かせないほど衰弱している。

頭に浮かぶのは、自分の軽率な行動への後悔ばかり。そして、帰れないことの悲しみ。

少女の薄く開かれた瞳には、一筋の涙が浮かぶ。


その時、風に乗ってかすかに声が聞こえて来た。

その声は透き通り、険しい雪山とは裏腹に、優しく暖かい歌声であった。


「(歌声? 誰か助けに来てくれたの?それとも天使様のお迎えかな?)」


その声は、徐々に少女へ近づいて来る。

そちらを向こうと顔を上げようとするも、既にその力さえ残ってはいない。

顔を雪に埋めながら、少女は歌を聴く。

その暖かい歌声に安心したかのように、目を閉じる。このまま眠りにつくのも悪くない。

そう考えていると、声をかけられた。


「えっと、大丈夫ですか?」


そこで、少女の意識は途絶えた。

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