第122話 北高祭2日目 生徒会長の企み

 さて、この後は生徒会室には戻らず、他の生徒会役員にも知らせず、単独で探索することにしよう。


 電子ピアノは既に運び出されているから、どこかに隠しているか、あるいはもう設置済みと考えるべきでしょう。比較的大きな物なのですぐにわかるはず。

 と思ったら廊下にカーテンが落ちている。


「これは何?」


 近くで喋っている女子生徒に聞くと「電子ピアノを運んでる人たちが落としていった」と言っている。え?なんてことなの。


「落としたのを見ておきながら、知らせてあげるとか、カーテンを拾うとか、どうしてしなかったんですか?」

「す、すいません。あとで拾いに来ると思って…」

「思い込みで行動したらいけない…いえ、それよりもその運び屋はどっちに行きましたか?」


 女子生徒は窓の向こうを指差した。その先には渡り廊下が窓越しに見えている。


「あ…」


 真ん中あたりに謎の第三者が居る。校内ライブの場所はあそこで間違い無さそうだ。

 こっそりと覗いてみると、真ん中あたりに電子ピアノが設置され、謎の第三者が床に目印のテープを貼っている。恐らくギターとボーカルの立ち位置だ。

 そうするといつも撮影をしている女子はその向かい側から撮るんだろうな、余裕が有れば彼女の背後も取りたいけど…まずは叔母さ…宮前先生だ。

 職員室は渡り廊下の反対側だから、宮前先生は向こう側から現れるだろうな。どのタイミングで現れるか、その時に合わせて私も行かないといけない。


「渡り廊下のちょうど真ん中あたり、ライブで集まっているオーディエンスの前で劇的勝利をするのはこの私」


「あ、あのー…」

「ん?」

「私たちもう行っても良いですかー」

「あ…うん、いってらっしゃい」


 しまった。独り言を聞かれてしまった。それに、いってらっしゃいって何だ?あ~恥ずかしい。


「さてと、合奏同好会のたくらみは把握できた。今後の方針を決めるために生徒会室に全員集合だ」


 目の前で無許可ライブが行われようとしているのに宮前生徒会長は生徒会役員・執行部を生徒会室に召集し、自らも渡り廊下を後にして生徒会室に戻って行った。


 入れ替わるように、合奏同好会メンバーが渡り廊下に着いた。

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