第105話 握手会はカオスが混沌
2回目のライブが終わると、握手会の打ち合わせが始まった。なぜか
「握手は握手券1枚につき3秒、例えば2枚持ってる人が居たら6秒握手ね。会話をしていいのは握手している間だけ。笑顔で明るくね」
「亮以外の人間と手をつなぐのは嫌だ」
「俺も嫌だ。みこが他の人と手をつなぐのは見たくない」
「みこって言うなっ」
そうだよ、まどろみさんと亮には酷なイベントだよ。
「手をつなぐんじゃなくて握手よ。同好会費を稼ぐ為に割り切りなさいっ」
悪徳プロデューサーは反対意見に取り合わない。
「
「ダメに決まってるでしょ。我慢しなさい。宮子には剥がし役を頼むわ」
「わかった~、剥がしまくるね~」
宮子は分かってるみたいだけど、剥がし役って何だろう?
「握手が始まったら秒数を数えて、枚数分の時間が過ぎてもやめない奴を引き剥がす係員よ」
腕や首根っこを掴んで引き剥がせば良いってことなら簡単そうだ。撮影の合間に手伝おう。
「じゃあ始めるわよ。各自持ち場について」
まどろみさんとお嬢、亮の3人は一列に並べた机の前に立った。机ごしに握手して、終わった人から横にはけていくという流れだ。
「ただ今より握手会を始めまーす。握手券1枚につき3秒、それを超えたら剥がすわよ。ではお目当てのメンバーの所に並んでくださーい。そこっ走るなっ」
握手券を持った生徒がぞろぞろと部室に入ってくる。少しだけど女子もいる。予想通り男子はまどろみさんの前に列を作り始めた。お嬢の前には5人。亮の前には…2人?香風がツーショットは2千円なんて言ったからだ。他の女子は?
「美咲さん、握手してっ!」
「え?なんで?あたし?」
「そう!いつも腕を
良いのかなあ、あたしは腕を掴んであげた。
「きゃ~、腕掴まれた、けっこう痛~い」
「はい、3秒、そこまでっ」
宮子に制止された。腕掴みも3秒ルールなんだ。
「私は首根っこ掴んで欲しい!」
「こう?」
そう言うなら掴んであげる。
「きゃ~、
なんなのこの子たち。でもちょっと面白い。
「はい、そこ!離れなさいっ!」
香風がまどろみさんと握手している男子に手こずっている。あたしの出番だ。腕を掴んで
「離れなさいっ」
「あ、痛たたた」
「きゃ~格好いいっ」
握手が終わり暇になった亮がまどろみさん専属の剥がし役になった。握手会って大変だ。香風って地下アイドルの握手会の時に色々と苦労してるのかも知れないな。今度アイドル活動の話聞かせてもらおう。
もう1人、握手が終わり暇になったお嬢は…。まどろみさんの列を見て、けっという顔をした。ブラックお嬢が現れた。そしてスタスタと暗幕の後ろに行った。まさか悔し泣き?!心配になって見に行こうとすると、ウェストの部分を折って見た目のスカート丈をかなり短くしたお嬢が現れた。
「お~っ」
アホな男子どもが声をあげ、半分くらいがまどろみさんの列からお嬢の列に移動した。
「ありがとー、みんな!これからもよろしくねっ!」
「おーっ!」
もしかするとお嬢って、香風よりも負けん気が強いのかも知れない。
カオスが混沌とした握手会(昼の部)が終わり握手券の数を集計すると、幸いなことにお嬢とまどろみさんは同数だった。その次はあたし、なんか複雑な気分だよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます