第100話 ミニライブにご招待です

 真知子先生に言われた人前ライブ実践は、放課後は部活があり聴きに来て貰いにくいことから、明日の昼休みにする事になった。

 

「皆さんお友達を何人か呼ぶんですよね。私はまだ友達が少ないので困りましたが、でもまどろみさん、私、名案を思いつきました」

「私も他の友達は居ないから人集めは諦めた。お嬢、どんな名案だ?」

「電子ピアノを貸してくれた東山くんに是非聴いてもらいたいです」

「そう言えばあれは借り物だったな。すっかり忘れていた」

「ということで招待します。東山くんはどこでしょう…」


 教室を出ようとしていた東山は、不幸なことにちょうど美咲が宮子たちと喋っている前を通りかかっていた。


「美咲さん、その男を捕まえて!」

「ほいきた、えいっ」


 速攻で腕を掴む。


「痛い、やめろ、最近掴まれないと思って油断してた」


 じたばたと暴れるので、あたしは首根っこを掴んでみた。ダメだ、じたばたが止まらない。やっぱり先生のように動きを止める事が出来ない。


「東山さん、お願いが有ります」


 お嬢は、キラキラとした上目遣いで東山くんを見た。


「な、なんだよ」


 じたばたしていたのに、あっさりと動きが止まった。首根っこを掴むより効果的、もしかして能力?!あたしも真似してみよう。掴むのをやめて、上目遣いで…


「東山くん、あたしからもお・ね・が・い」


 どうだ?


「な、何かたくらんでるんだろ、怖い」


 逃げようとしたから、また腕を掴んだ。あたしの上目遣いでは人の動きは止められないみたいだ。


「企んでないわよっ。それ以上抵抗したら腕をねじるよっ」


「東山さん、そのまま聞いてください。電子ピアノを貸してもらったお礼にミニライブに招待します。明日の昼休みに部室に来るように。来なかったら美咲さんに連れてきてもらいますからね!」

「行くから離してくれ~」

「じゃあお待ちしています!絶対に聴きに来てください!」


 東山くんは腕を離すと逃げるように教室を出て行った。満足そうなお嬢、もしかして東山くんのこと気になってんのかな?


「同じ電子ピアノを使っても、私が弾けばその能力を存分に発揮出来ます。最初は電子ピアノなんてって思いましたが、今ではお気に入りです。東山さんには、いかに宝の持ち腐れだったか思い知って貰って、電子ピアノを合奏同好会に差し上げますって言ってもらいましょう!」

「なるほど、実に名案だな」


 なんか企んでたのはお嬢だった。まどろみさんもなるほどとうなずいてる。ダメだよ、さすがにそれはブラックだよ。

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