第99話 わかったのかわかってないのかわからない

「どうなったの?」


「うん、亮はわかってくれなかった」


 え?ウソ。ここは普通だったらわかってくれたって展開になって、めでたく大円団を迎えるはずなのに。


「わからないよ。でも告白されるのを避けている理由というのがあるのは、わからないなりにわかった」

「うん、その点は、わからないなりにわかってもらえた」

「嫌われてるわけじゃない」

「嫌ってるわけじゃない」

「その誤解は解けたよ」

「誤解は解けたのに、わかってくれないとは思わなかった」

「誤解は解けたけど俺は告白し続ける。付き合ってください」

「ダメだ。意地でもわかってもらう。付き合うとしても、まずわかってもらってからだ」


 ややこしい。この2人は何を言っているの?意地の張り合いになってる。


「つまり、告白されるのを避けようとしていたことには理由がある、という点はわかったが、その理由の内容については理解しがたい、そう言うことだな?」


 さすが先生、わかりやすい。何を言ってるのかわからなかったところがわかった。


「嫌われてるのかも、避けられてるのかも、その誤解は解けたんだな?」


「はい、みこは俺のことが大好きだということはわかりました」

「み、みこって言うな。亮私のことが大好きなんだな。でも名前で呼ぶのは付き合ってからにしてくれ」

「亮?俺のこと大好きだって認めたな。さあ、付き合ってください」

「ダ、ダメだ。まず私を理解しろ」

「乗り越えたいことが有るなら俺と一緒に乗り越えよう」

「う、うん、ありがとう。い、いや、私がずっとひとりで抱えてきた問題だ。ひとりで乗り越えたいんだ」

「みこはもうひとりじゃない!」

「みこって言うな!」


 2人はお互い想いあってるとよくわかる。


「おっと、いけない。職員会議に遅刻だ。行ってくる」


 先生の表情は少し冴えなかった。なんでだろう。


 お嬢は、もうやっとられんわー、という顔をした。


「美咲さん、歌練しましょう」


 そして小声であたしに言った。


「でもほんとに良かった。あの2人は大丈夫ですね。名コンビです。うらやましいな」

「そうだね、あとはいつ付き合うかだけだね」


 あたしたちが歌練を始めると、程なくまどろみさんも亮のギターで歌い始めた。うん、いつも通りだ。

 最後にライブの曲も練習した。あたしはスマホカメラで撮影する。最初の頃より格段に上手くなってる。



「どうなったっ?修羅場?あ、あれ?」


 漫研が終わった宮子が来た。修羅場って、何を期待してたの、さすがに怒るよ。


 夜、香風このかにメッセージで報告した。

 香風は納得いかないようだ。


香風

〔煮え切らない〕

〔だらだらしてる間に亮の気持ちが変わったらどうすんの?〕

〔しっかり捕まえとけっての〕

〔みんな暢気に考えてるけど〕

〔これは結局付き合わないってパターンもあるわね〕


美咲

〔え?どういうこと?〕


香風

〔愛情が友情に変わってしまうってことよ〕


 先生の表情が冴えなかったのはそのせいだったのかも知れない。

 あの2人の仲がずっと発展せずにこのまま、そんな未来は嫌だな…。

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