第61話 恋バナ? ④ 御前浜美咲

「じゃあ次は…美咲、いってみよう~」


 え、じゃんけんしないの?ここからは指名制なの?

 でも恋なんてしたこと無いしなあ。


「あたし恋バナなんて全然無いから話すこと無いよ」

「そうなのよね、美咲って昔から男っ気が無いのよね。うーん…違うな、そうじゃなくて…男っ気は有ったんだけど不特定多数だったよね」

「へ~、あんた大雑把な性格してるのにモテてたの?」


 即座に突っ込みを入れてくる香風このか


「大雑把で悪かったわね…自覚はしてるけど。て言うか宮子、その言い方だと、あたし男を取っ替え引っ替えしてたみたいに聞こえるじゃない、やめてよ」

「あ~、ごめんごめん。どう言ったら良いのかな…うん、そうだ、いつも男子をはべらかしてたよね…ダメだ、この言い方も違うな~」

「宮子、わざとでしょ?」

「バレたか~」


 テヘッと首をすくめる宮子。

 これ以上宮子に喋らせるとますます誤解を生みそう。あたしが自分で喋らなきゃ…。

 あれ?自ら話すって、あたし、策士宮子の術中にはまったのかな?


「あたしは性格が男っぽいし、小学校低学年の時は学年で一番背が高くて運動もできたから、周りの男子からは一目置かれてたんだ」

「ドッジボールとか、俺たちのチームに入ってくれってよく言われてたよね~。美咲の居るチームは向かうところ敵無しだったね」

「うん、そんなわけで男子に慕われてたの。はべらかしてたわけじゃ無いからね」

「その中に良い人は居なかったんですか?」

「うーん、皆で遊ぶのが楽しかったから特定の誰かってのは無かったなあ」

「男子に慕われてたってことは、女子からは嫌われてたんじゃないの?」


 香風が意地悪な質問をしてくる。


「残念でした、女子からも慕われてました」

「美咲はね、女子をいじめる男子が居たら、腕をひねって首根っこを掴んで組み伏せてたから女子からも人気あったのよ~」

「そうなんだ、わたしが階段の踊り場に連行された時のあの感じね」


「でもね、高学年くらいになってくると段々と男子に身長を抜かされて、運動能力も負けてきて、一緒に遊ぶことも無くなったの。そんな時に音痴とからかわれて男子って面倒くさいって思うようになって、中学でもあんまり男子とは関わらなかったわ…こういう訳だから、あたしに恋バナは無いの」

「美咲さん…恋って良いですよ。今からでも遅くないです、恋愛デビューしましょう。残念な青春を送ったらダメです」


 残念って…まさかお嬢に言われるとは思わなかった。


「どっちが先に彼氏を作るか競争です!野球部を一緒に見に行きましょう!」


 え?まさかあたしも野球部限定?

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