第40話 真知子 vs 香風
部室の鍵、まだ返しに来ないな。そろそろ絶対下校の時間なのだが…仕方がない。
真知子は職員室を出て部室に向かった。
大方今後の方針について話し合ってるんだろうが、今日のところは帰らせて、ひとりでゆっくりコーヒーを飲もう。いずれはコーヒーミルも持ち込んで、豆から挽いて楽しもうじゃないか。サイフォンで入れるのも良い。きっと奴らはサイフォンを見たことが無いだろうから驚くだろうな。
部室に近付くと小柄なツインテールの女子がしゃがんで扉の隙間から中を覗いていた。
「騒ぐな」
急に頭上で低く押し殺したような女の声がした。
しまった、背後につかれた。しゃがんでいるわたしの真上に顔が有るので誰だかわからない。大柄女はさっき帰って行ってたから多分違う。それに制服では無さそうだ。しゃがんだまま横に逃げようとしたが、すっと脚が前に出てきて退路を断たれた。短めのプリーツスカートから伸びるその脚は見事な脚線美を描き思わず見とれてしまった。
もう一度見上げると、その女も隙間から中を覗いている。
え?この女、中を覗きながらわたしの動きを察知して左右の脚を出してるの?ただ者じゃないわ、完全に気配を消してわたしの背後をとったし、レベル最強から限界突破してるに違いないから無駄な抵抗は止めよう。
部室の中では
なんだ、つまらん。この生徒を尋問したほうが面白そうだ。
「来い、声を出すなよ」
わたしは首根っこを掴まれて階段の踊場に連行された。
「あ、1組の宮前先生」
わたしは無駄な抵抗は諦めて、従順な生徒を演じることにした。
「お前は?」
「わたしは3組の
「覗き魔か?」
「違いますよ。部活がまだ決まってなくて…1組の安井宮子さんにこの部を勧められたので、どんな部活か様子を見に来たんです」
「ほお、こんな時間にか?もう下校時間だ、活動は終わってるぞ」
私は何でも知っているとばかりに全てを見透かしたような眼差しだ。
「え、ええ、だから明日出直そうかな…」
「そうか、わかった。部室に入りにくいんだな。明日の放課後、職員室に来い。私が一緒に行ってやろう」
「いえ、明日はレッスンがあるので無理です」
「なんのレッスンだ?」
「ダ、ダンスです」
まずい、地下アイドルをしていることが学校にバレたら停学くらいにはなるかも知れないし、活動を辞めさせられるかも知れない。具体的な話は避けないと。
「なるほどな、よしわかった。明日の昼休み職員室に来い。来なかったら校内放送で呼び出すぞ」
この先生の校内放送は恥ずかしい。呼び出されるのは目立つから嫌だ。
「お弁当を食べたら絶対行きます」
「よし、じゃあ下校時間だもう帰れ」
解放されたわたしは逃げるように階段を下りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます