第31話 放課後モノローグ

「今日の同好会は、お嬢が休みだからずっと歌の練習をしたい」


 相変わらず授業中は寝ている微睡びすいだが、同好会のある放課後は、どれだけ眠くても起きているようになった。


「うん、わかった。でも最後はピアノに録音されている音を再生して、ギターと歌を合わせてみよう」

「うん、それを美咲に撮ってもらって確認しなきゃね」


 確認も大事だけど、泉が居ないから亮と2人だけで映る。しっかり練習して恥ずかしく無いように頑張ろう。そしてもちろん美咲に動画のデータも貰う。


「じゃあ、鍵を取ってくるから…」


 だから一緒に職員室に行こう、いつもそう言葉を続けたいが、恥ずかしい。

 でも亮が言ってくれる。


「俺も行くよ」


 そんな時、美咲は、宮子やお嬢たちと喋っていて、お先にどうぞと手を振ってくる。

 帰り道やレストスペース、亮と2人で話す時間は他にもあるけど、放課後の廊下をゆっくり歩いて話す時間も大切。この気持ち、もしかすると…。


   ◇◇◇


「じゃあ美咲さん、宮子さん、私はピアノレッスンが有るので帰ります」

「ばいばーい、また明日」


 お嬢が同好会に来ない日、同好会にはあたしとまどろみさん、亮の3人。

 まどろみさんは亮に気があるように見えるから、あたしは少し遠慮してゆっくりと部室に向かう。

 まどろみさんを応援したいと思うけど、亮がどう思っているのかがわからない。背が高いし割とイケメン、中学の時はバスケ部でレギュラーだったらしいから、彼女が居てもおかしくない。よその学校の子だったりしたらわからないから、いつかさり気なく聞いてみようと思ってる。


   ○○○


 ピアノレッスンは楽しいです。だけど今はお休みしてでも同好会に行きたいなあ。

 外部進学してすぐに出来た大切なお友達だから、少しでも長く一緒に居たいというのもあります。

 でも何よりも、今までひとりで弾いていたピアノが、他の楽器と合わせることでこんなにも楽しくなるなんて知りませんでした。

 外部進学して世界を広げようと思ったのは間違いでは無かったのです。

 入学式の日に美咲さんが声を掛けてくれたこと、ほんとに感謝です。

 野球部男子とお付き合いする計画は後回しにして、美咲さんたちと共に活動です。


   ▲◆▼


 亮は高校でもバスケを続けると思ってたのに、なんでギターなんかやってるの。

 このままバスケ部に入らずに同好会を続けるとか有り得ない。

 東中ひがしちゅうの居眠り少女と仲が良いのも気に入らない…。


 窓から差し込む光が廊下の壁に薄ぼんやりとしたツインテールの影を映し出した。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る