第23話 バス下校
「すまない、バスにしてもらって」
「いいよ、部長は睡眠時間削って頑張ってるし、部員はしっかりそれをサポートだ」
昼間に起きているという普通のことだが、
「私はいつも寝てたから、誰かと何かをする事が無かった。だから入学して半月ほどで友達が出来て同好会を作れるなんて思ってなかった。亮や皆が参加してくれて本当に嬉しい、ありがとう」
「部活どうしようと思ってたから、こっちこそありがとうだよ。自分に合った同好会を作るなんて考えは無かったからね」
バス停まで10分ほど。微睡は亮にお礼を言われ顔が赤くなるのを感じた。
「りょ、亮はバスケ部じゃなくて本当に良かったのか?中学のときレギュラーだったなら普通は高校でも続けるんじゃないのか?」
「普通か…普通ってみんなと同じってことでしょ、それってつまらない。普通じゃないほうが面白い」
微睡は入学式の日を思い出した。QRコードを表示させている横で、亮は面白そうだと言っていた。
「面白い…私は普通じゃない、面白いのか?」
「うん、面白い。面白くて笑ってしまうということじゃくて、興味深くて引きつけられるってことだよ。だから同好会にも興味をもったんだ」
引きつけられる…亮が私に引きつけられるってこと?
微睡の顔はさらに赤くなった。
「大丈夫?本当に顔が真っ赤だよ。バス座れるかなあ」
「だ、大丈夫」
バス停には部活帰りの生徒が多く居た。到着したバスには既に他校の生徒も乗っているので座れそうに無い。
「しっかり捕まっとけよ」
「え?そんな…う、うん」
微睡は恐る恐る亮の腕に捕まった。
「えーっと、まどろみさん…捕まるのは吊革」
さらに顔が赤くなる微睡。亮は楽しそうに笑っている。
下り坂、混んでいる車内。バスがカーブを曲がるとよろけた微睡は亮に身体を支えられた。
「まどろみさん起きて!大丈夫?降りるバス停だよ」
気が付くとバスの座席に座っていた。
「わ、私はどうなったんだ?」
「まずは降りよう」
駅前のバス停。多くの乗客が降りていく。
微睡は寝ている間の記憶をたどった。
立ったまま寝てしまい、女の人に席を譲られたようだ。亮がお礼を言っている。
「カーブでよろけたと思ったら寝落ちしたから支えてたんだけど、前に座ってたおばちゃんが席を譲ってくれたんだ」
「そうなのか…ごめん、迷惑かけた。そのおばちゃんは?」
「途中で降りていった。お礼はしっかり言っといたよ」
「ごめん…本当にごめん」
「気にしないでいいよ!家は近いの?心配だから送るよ」
「だ、大丈夫。しっかり寝たからもう大丈夫」
微睡は恥ずかしくなって、これ以上亮と居たら顔から火が出ると思った。
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