第22話 お嬢とキーボード
「うわ~広い部室だね~」
体験入部を終えた宮子がやって来た。
「あ、宮子、漫研どうだった?」
「面白かった!アニメの話もいっぱい出来たし、私は漫研でほぼ決まり。で、こっちは大丈夫なの?お嬢がぶつぶつ言ってるけど…」
「う~ん、どうだろう…キーボードの使い方を読んでるの」
「そうなんだ~、でもそろそろ絶対下校の時間だから片づけたほうがいいよ~」
「ほんとだ。お嬢、そろそろ終わらないと」
「おかしいんです。説明書通りに全部つないだのに音が出ません。やっぱり壊れて…」
「お嬢、これ何か知ってる?」
「ヘッドフォンです。あ…」
宮子はヘッドフォンのプラグをアンプのジャックから抜いた。
「どう?」
泉が鍵盤を叩くと音が出た。
「完敗です。恥ずかしいです。ホームランを打ったのに一塁ベースを踏み忘れ、それを敵チームにアピールされてアウトになるくらい恥ずかしいです。知ってますか?敵が審判にアピールしなかったら踏み忘れてもホームランなんですよ」
「へ~、そうなんだ~…」
音が出たのを確認し、
「じゃあ今日はここまでにしよう。私は戸締りして鍵を返してくる」
「まどろみさんは今日もバス?」
「うん」
「疲れてるけど大丈夫?前みたいに植物園行ったりしない?」
「う、うん大丈夫…」
植物園で寝てたことや泣いたことは亮に知られたくない。
しかし亮は聞いてきた。
「植物園って?」
「い、いや、バスが満員だったから時間を潰してたんだ」
美咲が聞いた。
「亮って帰りどうしてんの」
「いろいろだな。岡本が一緒の時は歩くけど、ひとりの時はバスを使ったりするよ」
「岡本って誰だっけ?…まあいいや、まどろみさん疲れてるし、今にも寝そうだから今日はバスで帰ってあげて!」
「いや、わ、私は大丈夫だ」
「ほらまた顔赤いし、ね、そうしよう」
「よし。部長!お供させていただきます!」
亮は笑いながら言った。
どうしよう緊張する。ほんとに昨日から変だ。亮が学ランをかけてくれたのは、きっとなんて事のない普通の出来事なんだ。それをこんなに意識してしまうなんて…。でも男子と一緒に帰るなんて、今までは考えられなかった。私には大切な仲間が出来たんだな。
みんなで鍵の返却に行き、正門を出るまでの間に、微睡は亮と帰るという緊張感とともに嬉しいという気持ちが有ることに気付いた。
「じゃあ亮、まどろみさんをよろしくね」
「おう!」
正門を出て歩いて帰る美咲、宮子、泉は坂を
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