顔色を伺う
森川 朔
第1話
「あんた今週の日曜日家にいるわよね」
「えっ?」
夕食終わり。そのままリビングでだらだらとバラエティー番組を見ていたら、母さんにそう聞かれた。ジャバジャバと洗い物をする音が聞こえてくる。
「ちょっとまって」
そう返して、予定が入っていなかったか考える。部活は確かなかったし、遊びに行く予定もなかったはず。
「たぶん家にいると思うけど」
「よかった。じゃあ悪いんだけど薫ちゃんの相手をして上げてくれない?」
「薫ちゃんの?」
「そう、久しぶりに綾乃がこっちに来るっていうから色々案内してあげるのよ」
「別にいいけど」
「ありがとう。……これでお酒飲み行けるわね。」
呟いた言葉も残念ながらはっきりと聞こえていた。それが薫ちゃんを連れて行かない理由か。綾乃さんは母さんの妹で随分と仲がいい。今でも暇さえ合えば長電話をしている。
薫ちゃんか。たぶん最後に会ったのは二、三年前だったはず。当時幼稚園の年長さんとか言っていたような気がするから、今小学校低学年ぐらいになるのか。記憶の中から薫ちゃんの容姿を思い出そうとするけど、上手く思い出せない。
「薫ちゃんあんたにべったりだったわよね。何処に行くにもついて回って」
「そうだっけ?」
「そうよ。お兄ちゃんお兄ちゃんって。覚えてないの?」
言われてみればそんなだった気もする。
「まぁ、兎も角、よろしくね」
話が丁度終わったところでインターフォンがなり、はいはいと言いながら母親が玄関のドアを開けにいく。
その様子を横目で見ながらテレビに視線を戻すと、バラエティー番組は終わってニュース番組に切り替わっていた。
『続いてのニュースです。××市の民家で、この家に住む山本明子さん(47歳)が首を絞められた状態で殺害されているのが発見されました。室内は荒らされた形跡があり、警察は強盗殺人として捜査を進めています』
物騒だな。なんて思いながら、テレビを消した。
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