残痕(ざんこん)


狭い部屋

背合わせに置かれたソファー

資格取得を斡旋する雑誌に混じる

子どもの絵本


過去に訪れたであろう人々の

複雑な思念 滞る中

壁掛け時計の音だけがカチカチ響く


こちらへどうぞ


細く狭い廊下 口をつぐ

ぼんやりとした頭で

壁に圧迫されながら進む奥の部屋


何度も鍵束が取り出され

何度もドアの施錠が開けられ

重い空気 重い足取り 重たい心


えぐり取られた傷口は

時を経て塞がろうとも

その残痕は決して癒えることはない


君も

私も

私たちも

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責(せき) 春秋 好 @kou007

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