ラブコメにトラブルはつきもの

第21話 彼氏になるために

そして作戦実行後2回目の会議が始まった。先日と同じく司会進行はいろりがやるようだ。




「園田さん、今日はどうだった?」


「そ、それが・・・10回くらいありました。」


「やっぱり、そうよね」





今日の朝、なぜいろりが焦っていたのか。


それは、ある噂が流れていたからである。



その内容は、俺と園田百合子は本当は付き合っていない!という内容だった。


どうしてそんな噂が流れているのか、誰が流したのか全く分からない。





「とりあえず、ヨコッチが彼氏らしいことしないせいだからね!」


「そ、そんなこと言われてもな!俺、彼女なんてお前くらいしか・・・いたことないし」


「・・・」




今回の依頼で俺といろりの距離は縮まったのか、遠ざかったのか俺にはよく分からなかった。




「なら、話は簡単ね!後輩くんがもっと彼氏っぽくすれば解決するということでいいのかしら」


「淵野先輩、俺はその彼氏っぽいってのが分からないんですよ」


「あら、それはおかしいわね。後輩くんいつも女と一緒にいるじゃない」


「いつもってことはないですけど」




まぁ、確かに最近俺の周りに女子が多い気がする。

鮫島さん以外は別にどうでもいいのだが。





「ではもう少し様子をみましょう。それでいいかしら佐倉さん?」


「そ、そうですね。わかりました・・・」





ひとまず今後の方針は決まったが、今日の会議はこれでは終わらない。

噂を流した犯人についていろりから話しがあるそうで、そのために今日緊急招集をかけたのだ。




「じゃあ本題に入ります。みんなには伝えた通り、ヨコッチと園田さんの噂が流れてるんだけど誰か心当たりがある人とかいないよね?」




いろりの話し方はまるで俺たち、部員の中に犯人がいるような話し方をしていた。


もちろんいろりの問いに対し、挙手する者はなく、みんな黙ったままだった。




「そう・・・なら言い方を変えます。この中で噂を流した人、正直に手を挙げて!」


「おい、いろり!なんで俺たちを疑うんだよ!」


「当たり前でしょ!だって付き合ってるフリをしてるなんて、1日でバレると思う?どんなにヨコッチが彼氏っぽくなくてもバレないわよ!でもそれがたった1日でバレた。つまりこの中に噂を流した人がいるってことじゃない!」


「そんなの分からないだろ!本当にたまたま誰かがそういう噂を流したのかもしれないだろ!」


「もしかしてヨコッチ・・・彼氏のフリが嫌でそういう噂流したの?」


「そ、そんなわけないだろ!俺じゃない!」





部員全員が俺の方を見る。今までにない視線、全員が敵のようだった。





「後輩くん、そうなの?」


「だ、だから違いますって!本当です、俺じゃないですよ!」




なぜこうなった。


誰だ噂を流したのは!


鮫島さんにヘルプサインを出したが、鮫島さんは首を横に振った。鮫島さんも俺を信じてはいないらしい。




くそっ絶対許さん!


鮫島さんにまで嫌われるじゃないか!


絶対犯人探し出してやる!





下校時、とりあえず園田さんと一緒に下校するところから始めた。





「ねぇ園田さん。彼氏っぽさってなんだと思う?」


「そ、そうですね・・・彼女を守ってくれたり、辛い時に一緒にいて支えてくれたり、ですかね」


「そ、そっか」





なかなかきついな


園田百合子の中での彼氏というものはハイレベルなものだった。


もしかして彼氏ってみんなこんなことしてるのか!?


面倒だな。





「まぁやるだけやってみるよ」


「は、はい!よろしくお願いします」





だがこの会話の後、何を話していいのかわからず園田百合子と別れる道まで両者無言だった。





「あ、あの!私こっちなので。さ、さようなら」


「あ、うんじゃあね」





そして別の方へ歩き出した時、園田百合子は俺に駆け寄ってきてこう言った。





「横田先輩、私は信じてますから!噂を流したの、先輩じゃないって信じてますから!」


「お、おう、ありがとう 」





あれ、なんだこの気持ち、嬉しいのか?


やばい鮫島さん以外の人でときめいてる。


でもこの胸のトキメキは・・・






「それじゃ先輩、また明日!」


「あ、あぁまた明日」





この会話から家に着くまでの間、さっきの園田百合子のことが頭から離れなかった。






「ただいまー」


「お帰りなさい、健二にい」





いつもなら何か言う聖奈が、今日は何も言わない。まるで気力のようなものが聖奈から抜けたようだった。




その日の夜、俺は寝る間も惜しんで明日のことを考えた。


ついでに犯人のことも・・・まぁ犯人の検討は何となくついている、それよりも彼氏っぽさを出す方が俺にとっては難しいことだった。





次の日の朝




「では今日も行ってきます!」




いつも通り無人の家に挨拶する。


さてと彼氏頑張りますか!





学校に着くと、園田百合子に告白をしている男子を目撃した。




「おい!俺の彼女だぞ、何してんだ!」





考えるより先に体が動いた。


よくみると俺が喧嘩を売った相手は3年生の先輩だ。


やっちまった




「す、すいません俺の彼女に何か用ですか?」





丁寧に言い直してみたが、最初の発言を撤回できるわけもなく、その先輩は殺気を放った。





「は?お前誰?てかさお前2年だよね、先輩にむかって何その態度!なぁ聞いてんの!?」





見立て通りのヤンキーぶりで少し笑ってしまった。


こんなテンプレみたいなヤンキーいるのかよ





「てめぇ!今笑ったか!?」


「いえ、まだ笑ってます」


「なんだと!」





その先輩は俺に殴りかかった。


それを見事にかわし反撃!といきたいところだが、そんなこと俺にできるわけもなく、顔面にグーパンを食らった。





「いってぇ」




ここは我慢だ!あれ今の俺もしかして彼氏っぽい?

俺は喧嘩をする構えをした。





「ほぉう、やんのか!」


「いえ、やりませんよ!男同士でやるとか気持ち悪いですから!先輩そういう趣味なんですか?」


「てめぇな、お前の立場わかってんのか!殺すぞ!」


「てめぇとお前とか主語2回も言ってもしかしてバカなんですか?」


「オメェ!ゼッテイ殺す!」


「いえ、殺されるのは嫌なので逃げます」


「逃がすわけねぇだろ!」


「いえ、逃げますよ」





そう言って俺はその先輩に携帯を見せた。





「ちなみに今の会話全部録音してあります。これうっかり手が滑ってSNSなんかにあがっちゃうかもしれないですね」


「俺を脅してんか!?あんまり調子にのるなよ!そんなSNSごときで俺が負けるとでも思ってるのか!」


「先輩は負けますよ!だって俺、先輩よりもSNSの怖さを知ってますし・・・てか実体験ですけど、それにこいつは俺の彼女ですから!」





俺カッケェーな!と正直思った。辺りにはすでに人だかりができている。





「そうか、お前よっぽど死にたいらしいな、名前!名前はなんつうんだ!?」


「横田、横田健二です!ぜひ覚えておいて下さい!」


「横田・・・あの生徒会長の弟か!余計ムカつく!最後に何か言っておきたいことはあるか!?最後の一言ぐらい聞いてやるぞ!」


「そうですね。なら、せっかくなので言わせてもらいます!俺は、園田百合子のことが・・・





(すごく緊張した。心臓が破裂しそうなくらい。嘘の告白なのにこんなに緊張するのか?そう考えるといろり、お前はすごい奴だな。お前もこんなに緊張してたんだな・・・ってなんでいろりのことなんか今は園田百合子の彼氏なのに)






好きだーー!」






辺りにいた人にも聞こえただろうか、かなり大声で叫んだ。


言った後も、心臓がバクバクしている。

これはきつい、恥ずかしすぎる。逃げたい、でもまだ・・・





「そんだけか!?じゃあなクソガキ!」





そう言って殴りかかってきた。


そして俺は目を閉じた。


もう少しで顔面に拳が当たる。その寸前で声が聞こえた。





「そこの2人!何してる!」





その拳は、顔スレスレで止まった。





「2人ともこっちへ来なさい!」





先ほどの声と同人物の声。この声は清水先生?



目を開けるとすぐ横には清水先生といろりの姿があった。





「2人とも生徒指導いきだな!」


「なんでそんなに嬉しそうなんですかね」


「別に嬉しくはないぞ、相手のやつはともかく、お前は私のクラスの生徒だからな!」




だからなんで嬉しそうなんだよ!

でもまじでナイスタイミング!もう少しで本当に死んじゃうとこでした。




そのまま俺と相手の先輩は職員室に呼び出され、目撃証言をもとに処罰を受けることになった。



その日は俺と相手の先輩は処分内容を言い渡され自宅に帰宅させられた。



1週間の自宅待機か。


まぁ相手の先輩は2週間だし、まだ良かった方なのか。それに自宅待機ということは勉強もしなくていいし、あの面倒な女どもと関わらなて済む。



そう考えると少し・・・寂しいな。



いつのまにか俺の心の中で変化が起こっていることにこの時初めて気がついた。






ピーンポーン


夕方、チャイムの音がした。



誰だろうか?まぁ自宅待機中だし、居留守でもするかな。




ピーンポーンピーンポーン!



居留守を使ったが一向にチャイムの音が鳴り止む気配はない。誰だよ一体!




仕方なく玄関に向かいドアを開けた。




「もう!なんで早く開けないのよ!」




そこにいたのはいろりと園田百合子の2人だった。

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