第20話 嫉妬はやられるとなかなかきつい
次の日の朝、朝食をとっていた俺に、話しかけてきたのは聖奈だった。
「これはどういうことですか!」
「これ・・・とは?」
手に持っていたスマートフォンを見せられ、俺は驚いた。
そこにあったのは園田百合子のブログ。
この度、彼氏と下校デートをさせていただきました!という内容のもの・・・いつ撮ったのか、写真まで貼られている。
そう、結局昨日彼氏をするフリをすることになったのは残念なことに俺である。
もちろんいろりの承諾は得た。いろりが俺の性格を知ってふった、ということにしてある。
もともと仮の関係なので、それほど俺には影響がない.。いろりは分からんが・・・
「健二にい、説明してください!どういうことですか!」
「こ、これはつまりだな、色々あってな」
「色々ってなんですか!健二にいは女なら誰でもいいんですか!」
「そ、そんなわけないだろ!俺は、俺には鮫島さんというものが・・・」
「いま違う女の名前言いました?言いましたよね!」
「えっ?なんのこと?」
つい本音が出てしまい、聖奈に問われたがしらを切った。
「もういいです。健二にいの女たらし!」
「お、俺は女たらしなんかじゃないぞ!」
「ふん!もう知りません!」
「そ、そんなー」
その後聖奈は全く口をきいてくれなかった。
どうしてこうなるんだか、くそっ!あんな部活に入る前はもっと静かに過ごせてたのに。
家を出てから学校に向かうまでの途中、同じ制服を着た生徒の注目の的になった。
あんなブログが出回っているのだから仕方がない。
もっとも、怖いのは嫉妬だ・・・園田百合子がふった男子は数知れず、そんな中パッとしない冴えない男子が園田百合子の彼氏になったのだ。
そりゃ恨み妬みはあるだろう...。
「あの、すみません」
後ろから誰かに声をかけられた。
聞いたことあるような声だ。振り向くとこの間俺とぶつかった女の子が立っていた。
「きみは、あの時の・・・」
「は、はい!この間は本当にごめんなさい!」
「いいっていいって、それよりいまは俺と話さない方がいいと思う・・・」
「ど、どうしてですか?」
俺は視線を周りにやり、その女の子に俺が周りから注目されていることを伝えた。
「まぁこういう状況だからいまは話さない方がいい・・・かな」
「そ、そうですか事情は分かりませんが大変みたいですね。ではまた機会があったら・・・」
そう言って女の子は小走りで学校に向かって行った。
また機会があったらか・・・優しい女の子だな。
学校に着くと下駄箱に手紙が入っていた。
俺はいつも通り、その手紙の内容を見ずにポケットにしまった。
あっ!前にもらった手紙、ポケットに入れてたのか!
ポケットに手を入れると先ほどの手紙ともう一枚入っていた。
あとで見るか。
「お、おはようございます」
後ろから軽く俺の制服を掴み可愛らしい態度で挨拶をしてきたのは園田百合子である。
うっ、可愛い・・・やはりどこか聖奈に似てるような気がする。
流石に女優なだけあって、スタイルは園田百合子の方が少し上だろうか。
「お、おはよう」
挨拶を返した途端、いっそう周りの視線が厳しくなった。
俺もうやめたい、こんなの耐えられません。やめてもいいですか・・・。
「ダメよ!頑張りなさい」
俺の心の声を読み取ったのか誰かが耳元でささやき、そして隣を通り過ぎて行った。
「い、いろり?」
すぐに振り返ったがそれらしき姿はなく、登校してくる生徒の多くが俺に視線をおくっていた。
「その、園田さん・・・またあとでね」
「は、はい横田先輩」
そうしてそれぞれの教室へ向かって別の方向へ歩き出した。
「横田くんおはよー!」
教室に入ると峯崎が元気よく挨拶をしてくれた。今はそんな気分じゃないんだけど・・・
「おはよ」
「おはよう横田くん」
「おはよう鮫島さん」
いつもなら俺から挨拶するが、今日は鮫島さんの方からしてくれた。
「大丈夫?顔色悪いけど」
「う、うん大丈夫」
「ならいいんだけど、無理はしないでね」
「わかった、ありがと」
うぉーー!なんて優しいんだ!
まじ鮫島さん天使、いやまじ神だ!なんていつもなら舞い上がるところだが、今日の俺にはそんな気力もなくただ言葉を交わしただけだった。
その後クラスでは男子の嫉妬の嵐を受け、いろりはなぜか俺を無視し、淵野先輩はいつもの毒舌もなく、哀れな目で俺を見てきて、峯崎も朝の元気はどこへいったのか、全く話しかけてこない。
唯一俺を心配してくれたのは鮫島さんだった。本当にありがとう鮫島さん・・・。
ー放課後ー
今日の会議はまずいろりの質問から始まった。
「それで園田さん、今日は何回告白された?」
「そ、それがされなかったんですよ、一度も」
「そ、そう」
「ということは、作戦成功、ということでいいのかしら」
「まぁ、結果から見ればそうなりますね。でもこれ、いつまで続ければいいんでしょう?」
作戦成功、というのはまだ早いと言わんばかりに長谷川さんが質問をした。
事実、いつまで続けるのかは俺も気になる。
できれば早く終わって欲しい。
「・・・」
少しのあいだ静かになった。
「園田さん、あなたはどう思う?」
その空気を絶ったのはいろり・・・園田さんに意見を求めた。
「そ、それはわかりません」
「でもあまり長い間ふりをしているとバレる心配もありますし、それに横田さんの身が・・・」
「べ、別に俺のことは気を使わなくてもいいよ」
鮫島さんの心配そうな顔を見て、愚痴をこぼすなんてことはできなかった。
結局その日の会議は何も進展しないままだった。
次の日、学校に行くと園田さんが告白されているのをたまたま目撃した。
どういうことだ?昨日はゼロだったんだよな・・・
教室に入るといろりが焦っているのか、勢いよく駆け寄ってきた。
「大変よ!」
「どうした?」
「それが・・・」
「なんだって!なんでそんなことになってるんだよ!」
「私が分かるわけないじゃん!とりあえず放課後、これについて会議するから絶対部活来てよ!」
「・・・わかった」
どうしてこうなった!いったい誰が?
くそ!本当に面倒なことをしてくれる!
授業中、いや部活が始まるまでの時間、ひたすら考え俺はあることを決意した。
もう誰になんと言われようとしょうがない。
やってやろうじゃねぇか!陰キャの本気見せてやるよ!
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