ラブコメに部活は必須
第17話 ヒロインが増えるのはいいことだ
あれから3日が過ぎ、いろりはお見舞いの次の日から学校に来ている。
実際屋上での出来事はあまり関係なく、本当に体調がすぐれなかったらしい。と思う。
「おはよう...」
しかしあの日からいろりの俺への態度が変化している。
挨拶一つにしても気まずそうで、こっちまで気を使ってしまう。
「お、おはよう...」
「あの、横田さん。最近お二人ともなんか変ですよ?何かあったんですか?」
「ちょっとね」
何かあったといえばあったし、ないといえば嘘になる。
「そうなんですか......あ、話は変わりますけど今日部活行きますか?」
「うん、行く予定だけど...」
そう、昨日から恋愛研究部活と改名し、部活が始まっている。
メンバーは淵野先輩、いろり、鮫島さん、長谷川さん、峯崎、そして俺を含めた6人である。
顧問は担任である清水先生がやってくれている。
この部活の名前でサイトに相談所を設けているのだが、今のところ相談はない。
放課後....
「こんにちは、先輩」
俺が部室に入るとすでに長谷川さんが座っていた。
「こんにちは...」
さすがに、気まずい。
長谷川さんとは関わりもそんなにないし、2人きりの時なんてなかったから.....早く誰か来てくれ!心の中でそう叫んだ。
「あ、あの先輩!」
「な、なんでしょう?」
「きょ、今日はいい天気ですね...」
長谷川さんもなにを話していいのかわからなかったのだろう。
とりあえず話しかけた感じだった。
「そ、そうだね...」
結局そのあと、無言だった。
てか誰か、誰でもいいから早く来てくれ!
ガラン
ドアを開ける音がした。入ってきたのは顧問の清水先生である。
「なにか用ですか?」
「なんだ横田、用がなければこの部室に入ってはいけないのか?」
「はぁ、まぁ一応顧問ですし、入っちゃダメとは言ってませんけど...」
「君はいつも、人を怒らせるような言動をするな。それじゃいつまで経っても友達できんぞ」
「うっそれは...」
少し言葉に詰まったが、俺は続けた。
「いや、そのなんていうか、ずっと一人でいた奴に友達をつくれ!というのはその一人でいた奴にはハードルが高いと思うんですよね...。」
「なら、そういう機会があればお前は友達をつくるのか?」
「それは分かりませんね。なにせ俺の友達基準はハードル高いですから...」
「そうか、じゃあ、お前は友達はつくらない。ということでいいのかな?」
「そ、そうですね、結局友達なんて自分を認めてくれる人が欲しいからつくるのであって、自分で自分を認めていれば友達なんていなくても、寂しくもないし、辛くもないかと...」
「はぁ、最後のは自分を強く見せているようにしか聞こえなかったのだがまぁいいだろう、それでだな今日は用があって来たんだ」
用があるなら最初からそう言えよ。
今の会話なんのためにしたのか全くわからん...。
「それで用ってなんです?」
「今日はな、お前たち恋愛研究部の初の仕事だ!ほら入ってこい」
清水先生に呼ばれて入ってきたのは、見知らぬ女の子だった。
「こ、こんにちは1年Cクラス、園田百合子といいます..」
雰囲気はどこか聖奈に似ているだろうか、ちょっと可愛いと思ってしまったのもそのせいだろう。
「百合子さん!!?本物!」
急に長谷川さんのテンションが上がった。
今の感じだと知り合いか?それとも友達なのか?
「え、えっとそのすみませんどちら様でしょうか...?」
俺はクスッと笑ってしまった。
まさかの友達でもなければ、知り合いですらなかった。
なんで長谷川さんあんなにテンション上がったんだよ...。
「先輩、いま笑いました!?逆に園田百合子を知らないんですか!?あの園田百合子を!」
「あぁ、悪いが知らんな」
長谷川さんは呆れた顔でこちらを見てきた。
「園田百合子っていったら、いま話題の超有名若手女優じゃないですか!この学校にいるっていう噂は聞いてましたけど、見たことなかったので本当にいるとは思いませんでした!」
なるほど、長谷川さんが驚くのも無理はないようだ。
この学校は俳優や芸人が多い学校ではない、そんな学校に人気の女優がいて、しかもその噂が本当になったのだから、テンションも上がるわけだ。
「それで、そんな女優さんがこの部活に用ですか?」
「え、えっとそのですね...」
「まぁそう焦るな横田。説明は私からしよう。園田百合子はいま言った通り、有名人だ。それで男子からの人気も高い。
でここからが本題だ。
まぁ簡単に言えば入学から今日まで学校の男子達に毎日のように告白されるみたいでな。
それをどうにかしてほしい。
ということだそうだ。そうだな園田?」
「は、はい今の先生の説明で間違いありません...」
なにかを隠しているような目だった。
学校ぼっち生活から約10年、俺はいつのまにかその人の言動で、なんとなくの心情を読み取るという技を獲得した。
前にも紹介したその場をやり過ごす寝たふり作戦もその一つである。
「それじゃあ後は頼んだぞ横田!私は色々やることがあるのでな。ほかの部員達にも説明しておいてくれ」
「ちょっ、ちょっと先生!」
引き止めようとしたが、依頼人を連れてきた先生は部室から出て行ってしまった。
そしてほぼ入れ違いに鮫島さん、いろり、淵野先輩の順で入ってきた。
「あれ!もしかして園田百合子!?えっ嘘、本物!?」
どうやらいろりも知っていたようだ。
だが鮫島さんと淵野先輩は知らなかったのか反応がなかった。
「あのすみません。園田百合子というのは....」
「あー、そっか鮫島さん帰国子女だもんね。えっとね最近超話題の女優さんだよ!」
「そうなんですか?この学校にそういう人がいたんですね」
「それでその有名人である園田百合子さんはなぜ部室にいるのかしら?」
「それはだな.....というわけだ」
「なるほど、じゃあ後輩くんがいやらしいことをするために連れてきたわけではないのね」
「そんなわけねーだろ!」
いや、なんで俺が容疑者扱いで話をスタートさせていたんですかね。
それに長谷川さんもいるしどう考えても違うでしょ!
「まぁ、それもそうね後輩くんに限って人を連れてくる。いえ、人と話すなんて無理難題だものね」
この人の俺に対するこの嫌がらせ的発言はなんなんだ。
それに話し方変えないとどこぞのキャラと被るんですけどね。
「この部活のはじめての依頼だね!まさか始めての依頼人が園田さんなんて、嬉しいなー!」
いろりはやる気十分のようだ。
しかし俺には納得がいかなかった。
人から好かれることは悪いことじゃない、むしろいいことだ。
なのになぜそれを嫌がるのか、俺には理解できない。
「でもその依頼、私達じゃどうにもできないと思うけど」
鮫島さんが口を開いた。
その意見は俺も同感だ、俺たちで何かするより園田百合子自身が、何かした方が得策だろう。
「そ、その......私実はそんなに人と喋るのが得意じゃなくて、だから男子と喋るとか無理だしそれに毎日のように断ってるけど、実はその会話だけでも緊張しちゃって」
「なるほどな、いわゆるコミュ障ってやつだな」
「それを君が言うのかしら後輩くん。あなたの方がよっぽどコミュ障だと思うのだけど」
「そうだよヨコッチ!そこんとこはヨコッチの方が上だよ!」
「そんなことで上になっても嬉しくねぇよ!それに、俺はコミュ障ではない。人と話すことはちゃんとできる、ただ話すのが面倒なだけだ」
「なにその屁理屈、ヨコッチのバカ」
いやいやいきなりバカとかおかしいからね。
それにそんな気まずそうに話すのやめてくれ俺だっていろりとはまだ....
「それでどうするんですか?先輩!」
「うーんそうだな......じゃなくて、なんで俺がそれを考えなきゃいけないんだよ!そこは部長である淵野先輩でしょ!」
「あら、後輩くん。わたしを指名なんてそういう好みなのかしら?それともただ変態なのかしら」
いや先輩はなんの話をしてらっしゃるんですかね?
今の話とは全く関係ないよねそれ!
「ヨコッチ、変態だったの....?」
いやおかしいから、お前までそれに乗らなくていいから。
そしていろり、お前と話すの気まずいからもう喋らないで!
「とりあえず、峯崎さんが来てから考えましょう」
鮫島さんの発言により俺への攻撃は一旦おさまった。
ナイス鮫島さん、まじ神!
「あ、あのよろしくお願いします...」
園田百合子は深々と頭を下げた。
コミュ障なのに女優ってすごいなとか思って、自分とは違う世界にいることを確信した。
なにが違うって、そりゃ自分がやりたいことのために自分の弱点をその時だけでも克服できるということだ。
俺にはそんなことできない。いや逆に俺はそんな自分が大好きである。
「遅れました!」
しばらくしてようやく峯崎が入ってきた。
今日2度目の事情説明を終え、そして今日から園田百合子の依頼を受けることになった。
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