第12話 ヒロイン?いやただの友達



4月26日、その日は快晴だった。



暑い、まだ4月なのになんでこんなに暑いんだよ。



結局あの後、俺と沖野陸は職員室に呼ばれた。


一連の事情を話し、沖野陸は期限なしの停学処分となった。


正直退学が望ましかったが、まぁそれなりに良い結果と言えるだろう。




俺が家を出ると、佐倉が待っていた。そう俺は昨日から佐倉と仮の付き合いを始めたのだ。


仮だからな!仮!





「おはよう、ヨコッチ!」




よかった、いつもの佐倉である。

気まずい雰囲気とかつくられたらどうしようかと思ったが、この調子なら問題ない。




「おはよう佐倉」


「ねぇねぇ、一応付き合ってるんだからさ名前で呼んでよ...」




佐倉は恥ずかしそうにそう言った。

やだよ俺そんなの恥ずかしくて死んじゃうもん。




「名前で呼んでるだろ」


「そ、そうじゃなくてさ!い、いろりって呼んで!」





一応確認したけど、やっぱりやだよ恥ずかしいし緊張するし。




「い、いろり...」




やっぱり恥ずかしい。

あーもう逃げたい、この場からすぐに立ち去りたい!




「じゃあ、私も名前で呼ぶね。け、健二....?」




いやなんで疑問形!とか言ってみたいが、女子に名前で呼ばれたことがない俺は、恥ずかしいという気持ちの方が強かった。




「な、なぁやっぱりさ...」



「あーもう終わり、やっぱ名前で呼ぶとか無理だわ。ヨコッチのままでいいよね?」




名前で呼んでって言ったの佐倉だよね!?まぁいいけど、恥ずかしかったし。





「あっ!もちろんヨコッチはいろりって呼んでね!」




なんでだよ!それは不公平だ!


俺だけいい思いできないじゃないか!





「わ、わたったよ。い、いろり」





その後も学校の事とか、部活の事とかでいろりと話をしながら学校に向かった。




学校に着き、まず挨拶を交わすのは鮫島さんである。というかそう決めている!





「おはよう、鮫島さん!」


「おはようございます横田さん......と佐倉さん!」




なんかいろりに対してだけきつい言い方だったような。





「おはよう鮫島さん!」





なんか勝ち誇ったように挨拶したな。


いろりと鮫島さんは一体何をきそってるんだか。





「よぉ!横田!」





そう挨拶をしてきたのはクラスメイトの男だった。

いやお前誰だし、今回初登場だよね君!?すごい慣れた感あるんだけど。





「はぁおはよう、佐藤くん」





適当に名前をつけて挨拶を返してみた。佐藤という名字は定番中の定番、当たる確率は他の名字より高いと思ったからである。




「横田くん、僕は鈴木だよ!ちゃんと覚えておいてよ」




なにー!そっちだったか。


佐藤ではなく鈴木だったか。なんか悔しい...。





「お、おぅ悪いな鈴木」


「なーんてね、僕の名前は峯崎真司でした。よろしく!」




うわっ、こいつめんどくさいやつだ。峯崎とか定番でもなんでもないし、わざと推理させて、おちょくりやがったなこいつ。


それに顔も結構イケメンだし、こいつは却下だな。


ちなみに今何を却下したかというと、人間関係でこの先親しい関係になるかどうかである。


大体の人間のことは却下するので、その結果俺の周りには友達と呼べる存在がいないだ。





「し、知ってたし。あえて間違えてやったんだよ。峯崎!」





俺は少し強がってみた...。





「そうだったのか。横田くんすごいね!僕の名前ちゃんと覚えてくれてたんだね!」




覚えてるわけないだろ。

まぁ今さっき覚えたけど。それにこのクラスのほとんどの人の名前知らないし、てか名前覚えてるのがすごいとか褒められた。


なんかガキ扱いされてるようにしか思えないんですけど。





「ねぇヨコッチ、今日授業終わったら一緒に部活行こうね!」




「あぁ」





部活行きたくないんですけど。そういえば入部届けだしてない気が!まぁいいか、今日渡せば。





「でさ!横田くん、僕と友達になってよ!」


「いや断る」





峯崎は小学生レベルの友達のなり方を提案してきたが、とっさに断ってしまった。


断って良かったんだけど




「はぁ、全くつれないなー友達だよ!友達!横田くんいなさそうだから誘ってるのに!」





こいつは本当にいい性格をしている。

友達いなくていいんですー!あえてつくってないだけですー!とか思ったりしてみた。




「いや本当にいいから、それに友達ってのは徐々になっていくもんだろ?だからなんていうか.....」


「なるほど、言いたいことは分かった。つまり、横田くんは僕と友達になりたいんだね!」





いやいや話聞いてたか!?そんな流れじゃなかったでしょ!やはり最初の見立て通りこいつはめんどくさい。




「いや、そういうことじゃなくて.....」




良い言葉が思いつかなかった。





「じゃあこれからよろしく!」





そう言って握手を求めてきた。


俺はこの場を乗り切るために仕方なく差し伸べてきた手を握り、握手を交わした。

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