ライラが良くない選択肢を選ぶ話

@rairahura

第1話

リオンがやられた 命に別状はないけど、だいぶ悪いらしい ネルもホヘもずっとリオンから離れない みんな酷い顔をしてる

だめだ だめだよリオン リオンの火が弱くなったらレグルスの火も弱くなる

あたしは役に立てることもないし 部屋の外でぼーっと考えごとをしてた 何でこんなことになったか

聞いた話では リオンはアマルジャ族のやつらがイフリートを召喚しようとしてるって聞いて 止めに行こうとして そこで人質を取られたんだか罠にかかったかしたらしい アマルジャってもっと正々堂々としてるイメージだったんだけどそうでもないんだな


リオンは数日経っても目を覚まさなかった ずっと一緒にいるネルとホヘはだいぶ憔悴してる

あたしは別に疲れてはいないけど なんだろう 悲しい以外にすごく気持ち悪い感じがする 胸を掻き毟りたくなるような 憎い そうだ憎い リオンを傷つけた ネルをあんなに悲しませたアマルジャのやつらが憎くて仕方ない


きっと多かれ少なかれみんなそういう気持ちは持ってるんだろう でも誰も行動には移さない それは本人の資質だったり リオンがそういうことをきっと望まないからだったり

ネルは前の方かな 自分の気持ちを発散させて周りにぶつけることを良しとしないだろう 誰かがそういうことをすればきっとすごく悲しむ


だからこれは絶対に気づかれちゃいけない あたしが我慢できないやつで 今から最低な方法で発散させに行くことは 絶対にネルにも ああリオンにも気づかれるわけにはいかない

そうだ だから急いで行かないと ネルがリオンのそばを離れられない今


ザンラクに行く 確かアマルジャのやつらが儀式をするのはここだったはずだ

やっぱりあった 馬鹿みたいにクリスタルを溜め込んでやがる リオンたちを動けなくして それからイフリートを召喚するつもりだったんだろう 本当に馬鹿みたい

さっさと召喚しておけば良かったものを 鼻で笑ってついと一歩進み出る 儀式の準備に忙しいのか誰も気づかない そうだよな 一人で来るなんて思わないもんな?誰か来たらその時に召喚しちまえばいいもんな?だってこんなにあるクリスタルを一瞬で奪い切れるわけないもんな?例えば蛮神を召喚すれば使い切れるけどここに来るやつはそんなことしないもんな?ご丁寧に儀式の準備までしてくれて 本当に 馬鹿みたいだ 自分たちだけがその選択肢を持ってると思ってやがる

リオンは正々堂々まっすぐぶつかって行くから 相手が蛮族でも 自分を殺そうとしたやつでも殺すことをよしとはしないから こういうやり方は嫌うだろうな できればあたしもそれに添いたかったよ でも自分の気持ちを抑えられなかった


自分に楽しいとか嬉しい以外にこんなに強い気持ちがあるなんて知らなかった すごくドロドロしてて胸がムカムカして すごく不快だ お前らのせいだ だから死ね


あたしが捧げるのはこの気持ち あたしは今こいつらを憎んでる リオンを傷つけたこいつらを ネルを みんなを悲しませたこいつらを レグルスの火を消そうとしたこいつらを 殺してやりたいと思ってる 一匹たりとも逃しはしない 皆殺しだ

ほら 降りてこい イフリート あたしの願いとお前の信者が集めたクリスタルを食って お前の信者を殺せ


それはあっという間の出来事だった 儀式の準備の真っ最中だったアマルジャのやつらは突然召喚されたイフリートに困惑してる間にみんな焼かれて死んだ 自分の神様に殺される気分はどうだ?ざまあみろ

イフリートはそこらにあったクリスタルを全部食って それで消えた まだ奥の方にもあったみたいだけど あたしの気持ちは落ち着いたしそんなもんかな


でも と死体が折り重なる祭壇に降り立つ まだ生きてるやつがいるな?随分と運がいい いやむしろ悪いのかな どっちでもいいや

そいつは他のやつらに熱波を遮られて それでたまたま生き残ったんだろう それで そのまま動かないであたしが去るのを待ってるんだ 確かにぱっと見ただけじゃだれが生きてて誰が死んでるかなんてわかんねーな

残念ながら あたしの「超える力」はそういう状況にすごく都合がいいんだ 生きてるか死んでるかだけわかればいいこんな状況に


耳をすますとすぐにわかる 心の壁を超えて聞こえる 火が燃える音 そいつの心の火が燃えてる音 あたしのことを恨んでんのかな お互い様ってやつだ それで今回はあたしの方に分があったってわけだ 残念でした

死体の山をどかすとそいつがいた 今はどう思ってんだろう 怖がってんのかな 知らねーけど 頑張って死んだふりして誤魔化してもここまで近づいたら普通に心音が聞こえるから意味ねーのにな

そうやって一匹ずつ見つけて とどめをさして すっかり静かになった もうここに用はないや みんなのところに帰ろう


もしもネルに知られたら怒られるのかな 悲しむのかな アマルジャ族のやつらをたくさん殺したし クリスタルもだいぶ使っちまったし

ああでも ごめんネル あたしはネルみたいにはなれないみたいだ 今すごく気分がいい

リオンは助かるし 今回リオンを傷つけたやつらはみんな死んだし ネルが不安に思うことは全部なくなったよ


帰ったらエリーがいた 気づかれちゃったか

「...リオンたちには知られるんじゃないわよ」

「見逃してくれんだ?」

「気持ちがわからないわけじゃないからよ でも」

「次はない?」

「...こんなこと もう起こらないのが一番だけど リオンのことだからきっと同じようなことが起こるわ...その度に続けていたらいつか身を滅ぼすわよ」

エリーは優しいからこんなことしたあたしでも心配してくれてる でも

「次は気をつけるよ ありがとな」

「やめはしないのね」

「努力はするよ」

「いつ報われるのかしらね」

「さあ いつだろうな」

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