第47話 考察



 戦えない者達は、お兄様の邪魔にならないようにしなければならない。ひとまず集まって来た使用人達と、騒ぎを聞きつけてやってきた両親達を説得して、その場を離れていく。


 お兄様とウルベス様なら、猫の姿の邪神なら何とか対処はできるはずだ。

 普段の姿を見ているだけでは分からないが、二人は騎士団の中ではかなり優秀な部類に入る。

 たまたま会った他の騎士から、二人に任せておけば任務はほぼ達成したも同然だと言われるくらいなのだから、そう簡単にはやられたりしないだろう。


 それに加えて同じ部隊の者同士だから、意思疎通の面でも困る事はないだろう。


 さて、ここで気になるのが、我が家の庭に邪神が住み着いていた理由だ。


 だがそれは、至極単純な事だった。

 本来なら、ヒロインの傍にうろつくはずの邪神が私に流れてきただけの事だ。


 ヒロインには「人に愛されやすくなる」という加護がある。

 本当なら邪神は、その加護を奪い取り、己の力にして成長させ「相手を魅了し、服従させる」ために、ヒロインに近づいていくはずだった。


 だがこの世界では、ヒロインはすでに死んでいる。


 そのため、ターゲットが変わったのだ。


 私に「痛みを感じない」加護が与えられたので、それを知った邪心は予定を変更。その加護を成長させて「誰にも傷つけられなくなる」という力にする予定だった……と推測してみた。


 そうなってしまえば遠い未来……成長した邪神は誰にも手がつけられなくなってしまう。

「恨みを晴らすために女神を打倒する」なんて未来もありえなくなくなり、世界は大変な事になってしまうというわけだ。

 だから私が、それをヒロインの代わりに防ぐために、この世界に転生させられたのだろう。


 一周目のバッドエンド後の世界が続いていたなら……。

 最後の攻略対象である黒猫……邪神ミュートレスに刺殺された私は、まんまと加護をとられてしまっただろう。

 その世界では、周りの皆も巻き添えで殺されているかもしれない。


 今回は絶対に、そんな事にならないように防がなくてはいけなかった。


 だからそんな悲惨な未来を回避する為に、リスクを承知でウルベス様やお兄様に手紙を出し、邪神が我が家の庭にいる話を打ち明けていたのだ。


 信じてくれるか分からなかったし、頭をどこかにぶつけたとか思われて、精神状態を疑われる可能性もあったが、こうしてみるに彼等は信じてくれたみたいだ。


 しかし誤算だったのは、邪神のイベントが発生したのが、トールのイベントが終わってすぐだった事。


 そして、戦って倒す流れになりつつあるが、そうする為に彼等を呼んだわけではないという事だ。


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