第21話 幼なじみにモフらせてもらいました
時間にして使ったのは、ざっと数分ほど。
こちらの用事を済ませた後、アリオが楽団の今後の予定について話してくれた。
「そうだ、お嬢。今度特別公演があるんだ。夜にやるんだけど、有名な光の演出家と一緒にやるから見に来てよ。びっくりさせてあげるよ」
「まあ、本当? それはとっても楽しそうね」
彼からのその言葉に驚いたフリをする私は、内心でイベント発生を確信していた。
ウルベス様の時はこちらから誘わなければ発生しなかったが、アリオの時は相手から誘ってくれるので気が楽だ。
だが、あくまでも楽なのは発生時期を見計らう事だけで、内容は相変わらず危険一直線なのが、悲しいところだったりするが。
私はにっこりと微笑んで、ここぞとばかりに約束をとりつける。
「アリオの貴重な舞台がご近所さんにあるんだもの、必ず見に行くわ」
「やった、俺お嬢の為に頑張るよ」
「それは嬉しいけど、他に聞きに来てくれる人の為にも頑張ってね」
「分かってる分かってる」
気安いやり取りをしながらも、アリオから公演の日程や場所などの詳しいスケジュールを教えてもらう。
だが、久々の再開ともあってなのか最初以外は結構我慢を続けていてくれたトールが、しびらを切らしてきた。
「お嬢様、そろそろ」
彼は間にわざわざ間に入って話を遮って来る。
それでアリオがむっとするのは昔からよくある光景だ。
「お屋敷に戻りませんと。これ以上時間をかけると、マクギリス様達が心配されますよ」
「そうかもしれないわね。でも、もうちょっとだけ」
私はアリオの頭に手をやって、そこに生えている犬耳を思う存分にモフらせてもらった。
久々の再会なので、これをやらずに帰るわけにはいかない。
触れた手に、ふわっとした感触が伝わってくる。
「うん、やっぱりアリオの犬耳はとっても気持ちいわね」
「そうかな。自分で撫でてもよく分からないんだけど。でもお嬢に触られるのは気持ち良くて好きだよ。優しくてふわっとしてて、でもちょっとくすぐったいのがやみつきになりそうだ」
「そう、じゃあもうちょっと良いかしら」
「いいよ。お嬢が来るかもって思ってたから、いつもより念入りに手入れしてきたし」
もふもふもふ。
気持ちいいい。
アリオのもふもふはいつだって最高だ。
小さい頃は子犬の毛のように柔らかくて頼りなさげだったのだが、成長してからはもふもふのボリュームが増えて、おまけにツヤツヤしてきたので滑りが良く癖になりそうだった。
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