第70話 こいつが動き出すと――事件解決の方向に、一気に進む事を知っているぜ!

「おやおや、はた農業ですか? 赤城のおっさん」

「……ぬかせ、タバコを吸ってるだけで農家かよ」


 さつきの病室内に設置されている喫煙専用室。


 やっと、一服いっぷく出来たと思ったけどよー。


 けむりを出している事をからかってんのか? くだらねー。


「例の自転車は、うらら君の物だって」

「ああん? そう言えば、確認を頼んだか?」


 御門みかど坊があきれた表情を見せやがった。


 こっちは、DV野郎を捕まえたり。


 その騒ぎの対処について。


 さつきにもっちりしかられた所だぜ?


 あん? きっちりだったな。


 ったく、どいつもこいつも。


「これは、憐憫れんびんの表情だよ? 安月給やすげっきゅうで、お疲れちゃんだね」

「うるせー。ニート野郎が。血税分の捜査協力の進展は? 報告しろ」


 無職野郎も世間様に貢献こうけんしねーと。どんな形であれ。


 生活保護費も税金だからな。感謝しろよ? 活躍の場を与えてやってんだからな。


「……むしろ、今までの犯行と違った点に注目だね」

「相変わらず、考えが良く分かんねー奴だぜ」


 犯人は同一人物なんだろ? 異なる点だあ?


「被害者が中学生で男性恐怖症。スタンガンも使われていた。それから、生存している?」


 かなり大雑把おおざっぱだが。


 こんなんで考察こうさつ出来んのか?


「小学生と違って、それなりに判断能力もあるし。怪しい人物がだますのも難しいよね」

典型的てんけいてきな不審者説は、完全に消えたか」


 今更であるが。地道に犯人像をせばめる事にはなったのか?


「スタンガンの利点って何だろうね? おっさん?」


 クイズの出題者かよ。生き生きとしやがって。


「知るか。犯人にでも聞きやがれ」

「ひどい! 捜査協力辞めるかな。ぷんぷん!」


 いちいち、そんな事を考えてられっか。


 だからこそ、お前が担当してんだろうが。


「相手の力量りきりょう、体格を無視して攻撃! こちらだって、非力、小柄、体力無しでも装備出来る! くそ! 俺も欲しい! そうしたら、こんな怪我けがしなくて済んだのにさ!」


 鼻の怪我けがは、DV野郎を挑発したからだろ。


 ゲームに例えてんのか? 


 まあ、スタンガンについては、その通りだろうが。


「しくじったなあ。犯行も中途半端ちゅうとはんぱ。殺しそこねた。ぐああああ!」


 今度は、犯人の心理かよ? なるほど。


 俺のつたない答えに、返答してんのか。


「とまあ、この他にも判明した事は多々ありまして」

「……ほんとかよ? ぼしい手掛てがかりがあるとは思えねー」


 これまでと同じで。犯人についての目星めぼしかねえ。


 さつきの活躍で被害者は命を失う事には、ならなかったが。


「それから、うらら君の担任に連絡を取りたい。はあ。さらに――」

「ようやくやる気になったか? がははは! まかせとけ!」


 御門坊みかどぼうの事は。


 さっぱり分かんねー。


 が、こいつが動き出すと――事件解決の方向に、一気に進む事を知っているぜ!


 

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