第34話 祓――御門君でした。

「とにかく、街を巡回して撮影しまくるぞ!」

「懸賞金開催だー! 犯人につながる情報を集めてやるぜ!」


 御門みかど君との約束――強制査察の時間。


 午後の外回そとまわり開始です!


 と思いきや。通行人に名前を呼ばれたと勘違いして。


 そちらを凝視ぎょうししてしまった。


 でも、私の名前の由来としては。間違いじゃない。


 両親が言うには『お祭りの様に楽しく、活気ある人生を』との願いが込められているらしい。


 だから、祀理まつり


「うわ。さつきちゃんの懸賞金発言の影響だね」


 自撮り棒にスマホを装着しり歩く。


 もしくは、ビデオカメラで街中まちなかをひたすら撮影するつもりなのだろうか?


 怪獣映画の撮影なのかな!? ロケーション撮影!?


『ひゃほー! 怪獣が襲って来るぞー! ――、準備は出来てるかい?』


 あれ? 御門みかど君? 


 嬉々ききとしている姿? フラッシュバック?


 そう言えば。……高校時代に、映画のエキストラ出演したよね。逃げ惑う市民役だったな。


 今頃になって思い出すなんて。あの時は、他に誰か一緒に――

 

 ……疲れが溜まっているのだろうか? よく思い出せない。


「……まあ、人目が増えて犯罪を抑止出来れば。さつきちゃんの作戦の筋書すじがき通りだよね」


 5億円と言う莫大ばくだいなな金額。


 だけれど、人々の関心をきつけ。


 各種メディアに宣伝してもらう。


 費用対効果は……そこそこかな? 


 うーん、5億円かあ。一生働く必要無いよね。


「捕らぬたぬき皮算用かわざんようだね。今は地道に、お仕事!」


 足早に御門君の住処すみかのアパートに急ぐ。


 自分でも不思議なくらい。


 足取りが軽やかなのは、なぜだろう?


 昼食のソースかつ丼のパワーかな? 


 きっと、そうだよね!




「へい! そこの保育士ほいくしみたいな彼女! ちょこっと、お茶でもどう?」


 御門みかど君のアパートが目前もくぜんの距離。


 ここからでも、質素しっそなアパートの姿が確認できるのに。


 チャラい男性からナンパをされてしまった。


 八百屋やおやさんのかけ声だったら。


 品定しなさだめめをするけど。


 保育士ほいくしって何だ!


 御門みかど君をあやしているという意味なら。否定は出来ないかも!?


「これでも勤務中なので! 失礼します!」

「おいおい? マジ、真面目まじめかよ。人生楽しんでるー? 時にはサボる事も重要だぜえ?」


 う、うぜえー!


 お前は少しは真面目さを学べよ! 


 私をイライラさせるな!


 チャラは、私の行く道に先回りして邪魔をする。


 警察にでも通報しようかな?


 逆上して暴行でも受けたらどうしよう? 


 私、一人で対処出来るかな?


「なあ? いいじゃん! ほんの5分ぐらい――」

「悪いが先約済みでね。俺のよめ許嫁いいなずけ、昨夜は初夜を共にした💓 彼女が困惑してるだろ!」

「……誤解を招く表現。……ばか」


 対応に苦慮くりょしていた所に。


 飄々ひょうひょうとして登場したのは。


 はらえ――御門みかど君でした。


 危うく名前を口に出す所だった。


 名前で呼ばれると不機嫌極まりないからね。


 彼が主張するには『はらえ! はらえ! と何かを催促さいそくされてる感じが嫌なんだ!』との事だ。


 それから『はらうって事は。それなりに代償、対価が必要だからね』とか謎の格言を言っていた。


 君は文字通りおはらいでもするのかな?


 ともあれ――私が本当に困ってる時に。


 いつも近くに居るんだよね。


 こう言う所を見せつけられるから。


 彼を嫌いにならないでいる自分は――ちょろいのかも?


 


 

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