異次元空間を操る能力者の妹が俺の恋愛を全力で邪魔してくる件について
てるま@五分で読書発売中
プロローグ 異次元からの使者
玄関の磨りガラス越しに差し込むオレンジ色の夕陽が、少年の顔を赤々と照らしている。少年は今日のために買って貰った真新しい服を着て、二階へと上がる階段に腰掛けながらもうじき現れるであろう待ち人を待っていた。
台所からは少年の母親が料理をする音が聞こえてくる。
少年が待っているのは、もうすぐ自分の新しい父親になる予定の男と、妹になる予定のその娘である。
少年の最初の父親は二年半前、少年が小学三年生の時に交通事故で亡くなった。
父親は会社へ通勤する途中、車に轢かれそうになった子供を庇って死んだのだと少年は聞かされた。それを聞いた少年は大きな悲しみとショックを受けたが、誰に対しても優しくお人好しだった父親らしい死に方だと思い、時間をかけてその死を受け入れた。
そして父親の死から二年が経ったある日、母親は少年に聞いた。
「新しいお父さんは欲しくないか」と。
少年は別に新しい父親が欲しいとは思っていなかったし、元の父親の事を完全に忘れたわけではなかったが、母親はまだ若く、彼女にも新しい幸せを掴む権利があると思った少年は少し考えて頷いた。
それからしばらくして母親が少年に紹介した男は、少し寂しげな雰囲気を纏っていたものの、優しくて真面目そうな人物であった。
少年と男が初めて顔を合わせたその日、高そうなレストランで食事をしながら男は言った。
「私にも君より一つ下の娘がいるんだよ。今度会ってくれるかい?」と。
一人っ子だった少年はそれを聞いて少しだけ戸惑った。
少年は女の子と話すのがあまり得意ではなかったし、もし妹ができても仲良くできるかどうか不安だったからだ。しかし、そのような理由で母親の再婚を邪魔したくはなかったし、妹ができればいつでも一緒に遊ぶ相手ができるではないかと前向きに考える事にした。
その日から少年は新しくできる妹に会うのが待ち遠しくなった。
もし母親の再婚が決まれば、少年が今住んでいる家に四人で住む事になると聞いていたので、妹の部屋になるであろう空部屋を掃除したり、一緒に遊ぶためにお年玉をはたいて女の子でも楽しめそうなゲームを買ったりもした。
その間に母親の再婚話はとんとん拍子に進み、今日はその子を家に招いて、初めて顔を合わせる日なのだ。
どんな子だろうか。
仲良くできるだろうか。
ゲームや漫画の趣味は合うだろうか。
そんな事を考えながら待っていると、玄関の磨りガラス越しに人影が見えて、少年は呼び鈴が鳴る前にドアを開けた。するとそこには、母親の再婚相手である男が一人で立っていた。
妹らしき人物の姿が見えずに表情を曇らせた少年が辺りを見渡すと、男は少し困ったような表情を浮かべて言った。
「ごめんごめん、うちの娘は恥ずかしがり屋でね。さぁ、出てきて挨拶しなさい。彼が君のお兄さんになる人だよ」
すると。
……ズズズズズズ
突如、風鳴りのような音が辺りに響き始め、少年の目の前にある空間にメリメリと亀裂が入った。
少年が驚き後ずさると、亀裂の中から一対の小さな手が生えてきて、その細い指で亀裂を引き裂くように押し広げてゆく。やがて亀裂が広がりきった時、その向こうにある暗闇の中には、これまた闇が溶け込んだかのような真っ黒い服を着た小柄な少女がいた。
「あ……あ……」
玄関のドアに背中を預けて口をパクパクさせる少年に向かって、夕陽と暗闇を背負った少女は俯き気味にニンマリと微笑む。
「……コンニチハ、オニイチャン」
これが少年、『
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