6
あれだけ五月蠅かった夕日は、もう既に衰えていた。
アルバスからの手紙を、封筒へ入れる。
ボクは慣れた様子で、駅のホームへ降りていく。
無断で病院を飛び出したから、もしかしたらすぐにいないことがバレてしまうかもしれない。
その前に、行かなければならない。
ボクたちの洞窟へ。
電車に揺られてしばらくすると、見慣れた風景がやってきた。電車を降りて、改札を通る。少しだけ慣れた、この動作。
ボクは、もうあの頃のボクじゃない。
太陽や暗闇に怯えてばっかりで、愛してくれる人を突き退けた、リースじゃない。
ボクは、アルバスに会って、新しい自分になれた。
アルバスは、ボクにとって一番大切な人。大切で、独りにはしてやれない人。ずっと傍にいてあげたい人。
十四年前、保育園の前で会ったあの頃の約束を、今果たすのだ。
空には、煌びやかな無数の星が広がっている。
星の洞窟の土ボタルたちを、一つ一つ並べたみたいに。
その淡い光は、決して人を見下さない。見せつけて、わざわざ馬鹿にしに来るようなことも無い。
ただそこに存在して、じっとボク等を見守っている。
何をするでもなく、ボク等の帰る道だけを示して、星は煌めく。
目の前で光るあの星も、ボクを導こうとしている。
「もう、君を独りにはしない」
そう言って、ボクはその星の方へ、足を一歩動かした。
降下しながら、視界は、ただ一つの点だけを捉えている。
ボクは飛び込んだ。
満天の星が浮かぶ、暗黒の海の中へ。
後方に広がる、星の煌めきと共に。
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