ルル
お姉様に怒鳴られ、部屋を追い出された私達は、リビングにやってきていた。
普段はほとんど無表情なお姉様が、顔を真っ赤にして怒っていた。
その事実に、私は落ち込んでいた。
「お姉様を怒らせてしまった……」
一生の不覚。
この後、どんな顔してお姉様に会えば……。
「私はこれで2回目だけど、今回はさすがに喜んでいられないわ」
結局一週間伸ばされたものね。
というか、本当にドMなのね、この人。
今の言い方だと、1回目の時は喜んだということでしょう?
容易に想像がつくけれど。
「取り敢えず、今後一切ケンカはやめましょう。ティアナの逆鱗に触れてまた期間を伸ばされたら洒落にならないもの」
まさか、この人の方から言ってくるとは思わなかったわ……。
というか、真面目な顔で低めのトーンで言ってるから、この人、本気ね。
そんなにお姉様とお風呂に入りたいのかしら。
取り敢えず、頷いて答える。
もう二度とお姉様を怒らせたくないし。
「ねぇ、ルル。あなた、なぜその年齢でティアナのことをお姉様と呼ぶの? ティアナ、まだこの世界に転生してきて2日しか経ってないのに」
「えっ!?」
驚いた。
この人に年齢がバレていたことにではなく、お姉様が2日しか生きていないことに。
そういえば、お姉様は異世界からこの世界に転生したんだったわね。
さっき女王の部屋でそんなような話をしていたのを忘れてたわ。
それでも、転生してまだ2日しか経っていなかったなんて……。
外見年齢は確実に私より上なのに、実年齢は生後2日ってことでしょう?
……なんて都合のいい。
お姉様にこの世界の私の知るすべてを教えることができるのだから。
ちなみに、私は200年生きていたりする。
なぜそれを言わず、お姉様をお姉様と呼んでいるのか。
それは、お姉様がとんでもなく可愛くて、とんでもなく優しくて、とんでもなく尊敬しているから。
年齢なんて関係ない。
ただその理由があるから、お姉様と呼んでいる、それだけだ。
「お姉様が、生後2日……」
「そうよ。それでもお姉様と呼ぶの?」
「呼ぶに決まってるじゃない。私の勝手でしょう?」
「私は理由が知りたいのだけど……」
「ひ・み・つ☆」
この人に教える義理はない。
お姉様に聞かれたら、迷わず、余すことなく教えるけれど。
「あっそ……まぁいいわ。それより、ティアナにどうやって機嫌を直してもらうか、作戦を立てましょう」
「そうね、そうしましょう」
このままだとお姉様の機嫌が悪いままになってしまう。
それだけはなんとしても避けないと、最悪、妹として傍にいられなくなるかもしれない。
それは、絶対にイヤ!
なんとしても、お姉様に機嫌を直してもらわなければ……!
そう思ったところへ、このリビングのドアが小さくガチャリと開く音がした。
それを拾っていた私達は、二人してそちらを見る。
すると、そこにはなんと、隙間から眉を八の字にして遠慮がちに顔を覗かせているお姉様の姿があった。
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