コミュ障吸血鬼、いい感じ(?)に収める


「お姉様の可愛さなら似合わない服がないのは当然。なら、この人が数ある服の中から10着選べなかったのも頷けます」


 呆けた声を出して唖然としている僕達に、ルルがそう言った。

 瞬間、我が意を得たりとばかりにアンナが喋り出した。


「そう! その通りなの! 私の子どもの頃の服、大量にあるのだけど、その中から10着選ぶなんて、私にはできなかった……! だから、あの方法しか、あの方法しかなかったのよ!」


 なんか、また刑事ドラマの犯人が言いそうなこと言ってる……。


「でも選び方をお姉様が聞いて傷ついたことは事実なのでしょう?」

「うっ……」


 打って変わって痛い所をつかれたアンナは、押し黙った。


「吸血鬼の特徴はあなたなら知っていたはず。であれば、声を出さずにすることもできたはずですよね?」

「そ、それは……失念していて……」

「いいえ。あなたの性格からして、その時も浮かれていたのではないですか? 罰を軽減するためにもかかわらず、服選びに興が乗ってしまった。つまり、あなたはドMの変態だということです!」

「うぐっ……」


 えっ、なにこれ、なんの裁判……?

 あの時のことは、リオナが執り行った裁判(?)で決着がついてるんだけど。

 べつに僕は掘り返そうとしたわけじゃなくて、ルルに反撃させてあげただけなんだし……。

 もしかして、余罪を追求する方針なの?

 そこまでしてもらう必要はないよ?

 というか、なんでアンナは〝ドMの変態〟を否定しないの?

 あれだけ変態だって言われる度に否定してたのに。

 あ、そう言えば、あの時の罪状って〝どう考えてもエム罪〟だったっけ。

 今回もほぼ同じだ。

 ただ、〝エム〟から〝ドMの変態〟に進化してるけど……。

 ルルはルルで、なんで裁判できるんだろう。

 ただの吸血鬼だよね?

 僕みたいに人間の前世があるならともかく、そんな素振りを見せてないルルが裁判の真似事をできるのは、ちょっとおかしい気がする。


「というか、なんであなた人間の裁判の真似事ができるのよ! おかしいでしょ!?」


 あっ、アンナが代わりに言ってくれた。

 やっぱり、気になるよね。


「私だって、人間がどんなことをしてるのか興味が湧くことくらいありますぅ」


 アンナに向かって不貞腐れたようにそう言った。

 確かに、そういう時もあるよね。

 僕もアンナがどんな仕事してるか興味湧いたし。

 それとは違うかもだけど。


「そんなことより! あなたの罪状は明白。ならば潔く判決を受け入れなさい! お姉様、判決を」


 急に言われても、前回と罪状がほぼ同じだし、ルルの仕返しももう充分だろうし……うん、この辺でやめよう。


「……もう、やめよ……? アンナが、反省してくれれば、それでいいから……」

「お姉様がそう言うのであれば、やめます」

「……アンナ、これで、ルルの気持ち、わかった……?」

「えぇ、もう二度としないわ。ティアナに誓って」

「私も、お姉様に誓って、悪いことはもうしません」


 なぜそこで僕……?


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