コミュ障吸血鬼、喧嘩をする
アンナVS新人の騎士全員の攻防は、夕方まで延々と続いていた。
嬉しいことに、夕方になるにつれ、眩しさがだんだんと和らいでいき、夕焼け頃にはやっと普通に見えるようになった。
そのお陰で、アンナがどんな風に戦っているのかを自分の目で見ることができる。
アンナは、次々と襲い掛かってくる新人の騎士達が振るってくる剣を危なげなくいなして、いなしてできた隙を的確に突いていた。
たぶん、その一撃一撃が鋭く重いために、新人の騎士達が「うぐっ!?」とか「ぶふぉっ!?」とか「ぐえっ!?」とか言ってるんだと思う。
少しは加減してあげたらどうなんだろう……。
「まぁでも騎士だからね。あのくらいしないと訓練にならないと思うよ」
「……そうだね……」
「な、なんでそんなに不機嫌なの?」
「だって、本当にじゃんじゃんするから……」
思考読むの。
「えぇ? ティアナ公認になったんじゃないの?」
「……ありがたいって思うけど……急に返事されるのは……気持ち悪い」
「……!? そ、そんな……で、でも、それはティアナがコミュ障だからいけないんでしょ!?」
「!?」
リオナから出た言葉に驚愕する。
……そっか、それがリオナの本音なんだね。
「あっ……! 待って、今のなし! 無しだから! 今のは違うから!」
いいよ、どうせ僕はコミュ障で他人と目と目を合わせることすらできない臆病者なんだから……。
やっぱり、他人と話すなんて僕には烏滸がましいことだったんだ。
「違うの! 本当に違うの! 今のは勝手に出た言葉で……」
「だから、それが本音なんでしょ!?」
「!?」
「リオナのこと、(アンナと違って)常識人だと思ってたのに! もう、リオナのことなんか、知らない……!」
勢いに任せて叫んだ僕は、走り出した。
「あっ、ティアナ、待って! ティアナ!」
呼び止められるのを無視して、僕はリオナから逃げるようにその場から離脱した。
◆
一心不乱に走っていた僕は、気がつくと城門から出ていた。
リオナが追ってくる様子はない。
それはそうだろう。
あんなに酷いことをことを言ったんだから、追いかけてきてくれるわけがない。
――もう、このままアンナの家に戻ろう。
そう思った僕は、そこからは歩いてアンナの家に向かった。
その途中、突然、知らない人達に囲まれた。
そしてなぜか、老人から子どもまでいることに気づく。
なにこれ、どういう状況?
「君、ちょっと私達についてきてくれないか?」
「それより、一緒にいた女の子は!? 一緒にいないのか!?」
「いや、いないなら好都合だ。コイツを交渉の材料にすれば……」
なにを言ってるんだろうか、この人達。
まず、一緒にいた女の子って、どっちのことだろう?
あ、でも、アンナは外で一緒にいたことはないから、リオナのことかな?
ん? ということは、リオナを知ってるってことで……。
「……北村の人?」
呟いた途端、周りの人達があからさまに反応する。
「ち、ちげぇし……べつに吸血鬼に吸血鬼にされた挙げ句主従の契約を結ばされて、その吸血鬼にお前とリオナを連れてこいって命令されたわけじゃねぇし?」
「そ、そうそう、ぶっちゃけリオナが無事ならそれでよくて君を交渉の材料にしてどうにかリオナを連れていかずに済ませれないかと考えてたわけじゃないよ?」
二人の言葉に他の人達が執拗に頷く。
いやいや、思いっきり本音をぶちまけてるけど……?
そういうところは、リオナと似てるなと思う。
というか、僕を交渉の材料にしてリオナを連れていかずに済ませたいって言った? 言ったよね?
それはさすがに……いや、さっきリオナ言ったことのお詫びになるなら、それでもいいか。
「そ、それで、ついてきてくれるのか?」
思っていたところでそう訊ねられたため、僕は即座に頷いた。
こうして僕は、北村の人達に連れられてリオナを狙っているであろう吸血鬼のところに行くことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます