紅茶とケーキでまったりできない
みし
○月×日
放課後。
それは、秋晴れのさわやかな日だった。
「あー何かおもしろいことないかねぇ」
「雨海、あなたの存在自体がおもしろいじゃないの?自分の顔を鏡にでも映してたら」
後ろから女性の声がした。
「あー、なんだ斗姫かよ。俺が鏡なんかみたら鏡の方が見とれてしまうじゃないかよ」
「はいはい、冗談はそれまでにしてよね」
「と、斗姫。なんだよー。この俺の頭をこづきやがって」
後ろに手を振るとそこには斗姫の姿は既に居なかった。
斗姫は、自分の机の中から教科書とノートをおもむろに押し込めるとそのまま教室の扉を開けると言った。
「放課後だからって学校の教室でぼけーっとアホ面さらしているんじゃないの。それじゃ私は部活に言ってくるからあんたもさっさと来なさいよ」
「へーい。つーか部活って言っても紅茶飲んで、菓子食ってるだけじゃないかよ」
「それが紅茶文化研究部の部活動だよね。水や
「しかし、うちの学校も酔狂だな。メイド喫茶なんか部活動で認めているんだから」
雨海は背伸びをしながら、もう一度あくびをした。
「ちょっと、メイド喫茶ってなによ?とにかく部活に行くからあなたもちゃんと来なさいね」
斗姫は、扉をおもむろに足で閉めるとそのまま廊下に出て行った。
「へいへい、解りましたよ」
あくびをしながら雨海は返事をした。しかし、今年の秋は暖かいや『春眠暁を覚えず』と言うが秋眠も心地よさそうだ。
「じゃあ、もう一眠りしますか」
雨海は、机の上につっぷしてそのまままどろみの中に入っていった。
・・・・
・・・・
・・・・
「バチッ」
いきなり頭にハリセンの音が響いた。
「いてぇ。誰だよ。おでこぶつけちゃったよ」
後ろを振り返ると強暴そうな女生徒が仁王立ちで立っていた。
「ちょっと、部活に来ないで何で寝ているわけ」
「こら、てきとうな説明を入れるんじゃない作者。あなたにもハリセンチョップをお見舞いするよ」
「おい、小百合、誰に向かって話しているんだよ?」
「え?いやどこからから変な声が聞こえてくるから」
身長180m……ではなく、身長180cmの小百合が答えた。体重は不詳。スタイル、容姿ともに校内一、二を争う。黒髪のロングストレートは見事な天使の輪を作って艶やかに光っていた。バストもそこそこにあって、ぱっとめは女性らしい。ただその口に歯を着せぬ攻撃的な発言と強引な性格がすべてをぶちこわしにしている。彼女には近寄りがたいオーラが発せられているのか、なまじ男子生徒達は近寄ろうとしない。殺されたくなかったら小百合には手を出すな。これが校内の暗黙のルールだった。男子生徒で対等に話が出来そうなのは雨海ぐらいなものであろうか?
「全くその凶暴性はどこから出てくるんだ?肉食恐竜の血でも混じってるんじゃないか?」
「んな、訳の分からない事を言ってないで、今日は部の会議の日でしょ。またさぼろうとしているんでしょう?」
「いや、んなことは無い。ただ、ここで寝てただけだ。まぁ起きた頃には部活の時間は終わってるかも知れないけどな」
「それをさぼると言うの。もう、部長も他の部員も来ているわよ。全く2年にもなって何やっているのよ。後輩に示しがつかないわよ。とにかく部室まで来なさい」
「まぁおまえの場合は後輩に恐怖を与えているがな」
「つべこべ言わずにさっさと来なさい」
小百合は強引に耳を引っ張ると雨海を引きずっていった。
「いてぇー。やめろぉ。自力で行くから……。ちょっとまて。おい、こら……」
情けない声をだしながら雨海が懇願する。その懇願もむなしく小百合に教室から放り出されて、そのまま廊下に引きずり出される。首根っこを捕まれてそのまま引きずり回されるその情景は相撲取りに担ぎ上げられた小学生と言ったところであろうか?
「おい、また雨海やられているよ」
「まったく、こりなやつだなぁ。小百合さんを怒らせるとは」
「ホント、あそこまでチャレンジャーなのはあいつぐらいだよな」
その光景を見ていた男子生徒達がひそひそと話し合っている。
「こら、そこ何を話している」
小百合がそちらを一瞥した。
「い、いや何でもありません。さて家に帰らないと」
男達はそそくさと逃げていった。
「全く、情けない連中……」
「おまえが凶暴すぎるからだ」
「この期に及んでまだ口答えする気?」
「いえいえ、そんな気は滅相もございません。素直に部活に行きますので、その手を離してください」
「そんなこと言っても逃げだそうとするから駄目。女の子のエスコート付きで部活まで連れて行ってあげるんだから喜びなさい。あなたにはもったいなさ過ぎるわよ」
「んなこといってもこんな凶悪怪獣のメスと一緒でもうれしくないよな」
小百合が雨海の耳を強くつねった。
「いてぇ。やめろ、ごめんなさい。綺麗な小百合様お許しください。いや、辞めろ。辞めてくれ。いたい。いたい」
遠くから「はぁ、またかよ」と言うため息が聞こえてきた。
「と・も・か・く、おとなしく部まで来てれば、こんな面倒なコトしなくてもすむの。いい加減理解しなさい」
「部活と言ってもタダのメイド喫茶だろ。何の会議をやるんだよ」
雨海は、めんどくさそうに言った。
「今日の議題は文化祭の出し物と後期の予算の配分についてね。ってメイド喫茶って何よ。紅茶文化研究部でしょ。あんなまがい物の喫茶店もどきと一緒にしないでって言うの。お茶の文化は、中国の陸羽から始まると言われているの。それが大航海時代にヨーロッパに伝わってイギリスに根付いたわけ。イギリス人の飲む紅茶の量は膨大だったの。それは中国から輸入されていて巨大な赤字をだしていた訳ね。その為にインドでお茶の生産をしようと言う試みが何度か為されたわけだけど成功するまでには幾度と無い失敗を繰り返していたわけ。そもそもアヘン戦争も紅茶の輸入赤字を何とかしようとしたイギリス東インド会社が……」
「あーもう良いから解った。長いうんちくはやめろと言うの」
「ここからが良いところなのにねぇ。ところで毎回メイド喫茶、メイド喫茶と言うけど何で紅茶文化研究部なんかに入っているわけ?」
「それには言うに言えない事情があるわけでして……」
「まぁ、あんたの事だから楽そうなクラブを選んだって所でしょうね。一応、うちのガッコは生徒は全員なんらかのクラブに所属してないと行けないわけだからね」
「んと、こんな面倒な部活だとは思わなかったよ。部活さぼろうとすると無理矢理引きずられて連れてかれるし。文芸部かどっかもっとさぼれそうなクラブにしておけば良かった」
「楽しようとした罰よ。それより少しはそのねじ曲がった根性をなんとかしたらどうなの?」
「いや、おまえの凶暴性に比べればマシだ」
小百合の手に力がはいる。
「おい、苦しい、クビがしまるだろ……。お、おい……」
息ぐるしそうに雨海が息も絶え絶えにしゃべった。腕ががっちりとはまって動けない。小百合は決してプロレスラーと言う体格でもなく、どちらかといえばスレンダーな体格な訳だが筋肉だけは異常にある。なんでこいつはレスリングとかやらないで紅茶と菓子ばかり食っているのだろうか——五輪でメダルも確実——などと思ったが、今はこの状況から逃れる方が先だった。
「ご、ごめん、あやまる。い、息がつまる……そろそろ涅槃が見えてる」
「まったく情けないわねぇ。さあ、ついたわよ」
小百合は豪快にドアを開けると豪快に雨海を床に放り投げた。
ここは、紅茶文化研究部の部室。旧校舎を改造した部室である。こざっぱりとした部屋の真ん中に丸い大きなテーブルが置かれている。部屋の奥にはお茶を沸かすためのコンロと水道が置かれている。奥の時計は既に16時を回っていた。
「げ、げほっ。いてぇ。肘うったよ……あ、みなさんこんばんわ」
周りを見渡して雨海ばつが悪そうに言った。
「こんばんわにはまだ早いわよ。まったく、すぐに部活に来なさいって言ったのに一体なにをやってたの?」
斗姫が言った。
「いや、あまりに気持ちが良いのでついうたた寝をしてたらこんな時間になっていたわけだ」
「まったくもう、そうやって部活をさぼろうとするんだから、部長も何か言ってくださいよ」
「あのー、雨海さん。部活はさぼるものでは無いと思うの。ちゃんと毎日顔をだしてくれないとこまります」
部長と呼ばれた女子生徒は言った。
ぱっとみると小百合の方がこの部の親分で、もなみは書記の様に見えるが、なつきはれっきとした紅茶文化研究部の部長である。小百合が副部長兼書記である
「なつきちゃん、またその格好ですか?」
立ち上がって、床についたホコリをはたきながら雨海は言った。
そのなつきの格好は、白いカチューシャに紺のロングドレス、白いエプロンドレスを身につけていた。いわゆる正統派のメイドさんの格好である。
「この方が感じが出ますし、それにお菓子とか作るときに制服が汚れたらいやですから」
なつきは言った。
「まったく、やっぱりここはメイド喫茶だよなぁ」
やれやれと言った感じで雨海が言った。
「あのーここはメイド喫茶じゃなくて紅茶文化研究部ですぅ」
部長が困ったように抗弁する。
「これは、部長が大英帝国ヴィクトリア時代を再現するためにいろいろ研究して作ったこの部のユニフォームだぞ。予算の関係で今のところ一着しかないけどな。まぁヴィクトリア時代と紅茶の関係について今から一時間ほど講義してやろう」
小百合が横から口をだした。
「そ、それは結構です」
小百合が講釈をはじめると一時間どころで終わらなかった。どこにそんな知識が詰まっているのかは知らないがどうやら脳みそが筋肉で詰まっているようではなかった。これでも小百合は学年上位をキープしている優等生でもある。その言動さえなければと言う注釈付きではあるが、そんなことより雨海に取っては現状このくだらない会議とやらを無事やり過ごすことが先決だった。
「とりあえず雨海君、席について。会議を始めるから」
いつもながらの不毛なやりとりに嫌気がさしたのか、
「はーい。のりたん」
「もう、のりたんは辞めなさいって言ってるでしょ。美代ちゃんは、ああいう先輩は見習わなくて良いからね」
隣に座っている少女に向かっていった。暮橋美代は高校一年生。ツインテールが似合う女の子である。紀佳の中学からの後輩にあたる。
「先輩達っていつも楽しそうですね?」
美代が言った。
「楽しいと言うよりこいつが面白いだけなんだけどね」
斗姫が雨海を指を差して言った。
「そういう言い方はないだろ。せめてカッコイイとか言ってくれよ。なぁ慎司」
部室の反対側に座っている男子生徒、河原崎慎司に向かって同意を求めた。やはり高校一年の後輩で雨海の幼なじみの友人でもある。
「突然話をふられても困ります。庭家先輩」
困ったような顔をして慎司は言った。
「とにかく雨海君は早く席に座りなさい」
「じゃあ春香ちゃんと薫ちゃんの間で」
「だめ、あんたは、わたしと斗姫の間に座るの。寝ないように監視しないといけないからね」
小百合が言った。
「げ、地獄だ」
「何か言った?」
「い、いえ何でも無いです。天国が見えそうになっただけです」
ちなみに部活に三年生はいない。一応進学校なので受験勉強にいそしむと言う事で夏休み明けからは部活動からはずれているからだ。しかし、この学校の進学校と言う建前もあやしいものである。仮にも付属高校なので大学へは推薦で行けてしまうからだ。受験勉強中とはいえ時々顔を出す先輩も居る。頭を使ったときは甘いものの補給が必要などと言いながらふらりと現れてケーキを頬張っていつの間にか消えている。しかし今日は会議とあってか流石に先輩達はいなかった。
「今日は美紅ちゃんも里佳たんもいないのかぁ」
雨海はとりあえず思いついた先輩の名前を挙げてみる。
「そりゃ今日は会議だからねぇ。と言うか船舶をちゃんとかたんとか呼ぶのは辞めなさい」
斗姫が言った。
「その方がかわいいと思うんだけどねぇ」
残念そうに雨海が言った。
「……と言うかいつまで経っても本題に入れないからやめい」
後ろから小百合のハリセンがとんできた。
「でぇ、本題なのですがぁ。まず文化祭の出し物について話し合いたいとぉ思います。誰かの所為で時間がないからどんどん意見だしてね」
部長が、本題を切り出した。相変わらずの舌っ足らずぶりである。
「んなもん、メイド喫茶で良いんじゃないの?どうせメイド喫茶みたいなもんだし」
すかさず、雨海が切り出す。
「文化祭の出し物についてだけど、何か意見は無い?」
小百合は雨海を無視して、みんなの意見を聞いて回る。
「ちぇ、無視かよ」
「紅茶文化研究部だから喫茶店と言うのは安直なのでみんなの意見を聞きたいのですけど?」
困惑したように部長が言う。
「去年は何をやったんだっけか?雨海君」
ふてくされている雨海に紀佳がふってくる。
「ええっと、何だっけ?よく分からない展示をやってたような気がするけど」
「こいつは去年の文化祭さぼってたから知っている分けないだろ」
小百合がすかさず答える。
「んー美紅ちゃんや里佳たんがかわいかったのは覚えているけどね」
「まったく、しょうがないねぇ。去年は紅茶の試飲会よ。様々な茶葉を集めて、たとえば、ダージリンのファーストフレッシュとか、これはストレートで飲むと良いのよね。それから、アッサム直輸入のアッサムティ、これはフレッシュミルクでミルクティで、中国のキーマンとか、後、ラプサンスーチョン。においが独特だからお客さんがびっくりしてたわよね。それから、アイスティ。これはアールグレイを使ったわね。紅茶を入れる時は温度管理と時間が重要なのよね。茶葉の種類、大きさ、新鮮さなどでちょうど良い時間と温度が変わってくるから、それから…………」
小百合が延々と紅茶の種類をあげては説明を続ける。
「さゆりんが話すと長くなるから辞めて本題に入りましょ」
小百合が永遠と長口上を始めたところを紀佳が遮る。
「え、ここからが本題なのに」
「本題は文化祭の出し物じゃないの?」
「あ、そうだった。美代ちゃん、薫ちゃん何か意見ない?」
「……と言われましても喫茶店以外のアイデアと言うとなかなか思い浮かばないです。小百合先輩」
美代が答える。
「薫も良いアイデアが思い浮かびません」
「慎司君は?」
「んー、やっぱり喫茶店が良いと思うんですけど、喫茶店はどこもやっているから駄目でしょうね。ましてやコスプレ喫茶やメイド喫茶なんか当然のごとくやっている見たいですよ。密かに調べた所では5クラスぐらいは似たようなアイデアが出ている様です。とは言っても喫茶店以外のアイデアとなるとなかなか妙案が浮かばないですね」
「んー、つーかそれは一体どうやって調べたのよ?」と小百合。
「それは企業秘密と言う事で」
「まぁしょうがないわねぇ。斗姫は何か意見無い?」
「去年は紅茶の試飲会だったから今年は紅茶に合うお菓子の展示会とか良いんじゃないの?紅茶を使ったお菓子とか。紅茶のシフォンケーキとミルクティの組み合わせ。これもなかなかいけるわよ」
「紅茶のお菓子ねぇ。なかなか良いアイデアだとは思うけど何となくしっくり来ないのよねぇ……ところで雨海は?」
気がつくと隣に居るはずの雨海が居ない。
「はっ、また逃げ出した?」
すると部長の後ろから突然大きな声がする。
「わっ!」
「きゃっ」
部長がのけぞる。
「びっくりした?」
いつの間にか部長の席の後ろに回り込んでいた雨海が笑っていた。
「部長はいつおどろかしても、面白いなぁ。驚くとなぜか猫耳と尻尾が生えてくるんだよなぁ」と部長の猫の耳?をなでる。みると部長のカチューシャの横から白い猫の耳がイスの間からは真っ白な尻尾が生えている。
「ちょ、ちょっと雨海君やめてくださいぃ」と部長。
「こら」
パッシーン。
小百合のハリセンが横から飛んでくる。雨海が壁際まで吹き飛ばされる。
「なつきをおもちゃにして遊ばないって何度言ったら解るの?雨海」
雨海は、壁に張り付いたまま失神している。小百合は伸びきった雨海を元居たイスまで引きずってどこから取り出したか解らないロープでくくりつけた。
「さゆりん、いつも思うんだけどそのロープやハリセンは一体どこから出てくるの?」と斗姫。
「さぁ?いつのまにか出てくるのよねぇ。さて、これで良し。減らず口をたたけないように口もふさいでおこうか?」
「流石にそこまでしなくてもぉ」と部長。
「なつきがしっかりしてないからこいつがつけあがるんです。まぁこいつはこのままにしておいて続きを議論しましょうか?」
「あの、その、部長。なんでびっくりすると猫の耳と尻尾が出てくるんですか?」
美代が訪ねた。
「え、これはあのーそのー産まれたときからそうだったんです。そういうものなので私には解らないんです」
「美代ちゃん、まぁ一つや二つの不条理な事で驚いてちゃ駄目よ」
紀佳がフォローに入る。
「この学校は不条理な事だらけなんだから。そもそも雨海君の存在自体が不条理だしね」
「まぁそこまで言う必要もないんじゃないの。こいつが変なのは確かだけど」
斗姫は笑いながら言った。
「それで、文化祭の件なんですがぁ。さっきから全然話が進んでないと思うのですけどぉ」
部長が話を戻そうとする。
「そうだったわね。なつき。それじゃあ何か他に案は無い?」と小百合。
「やはりこういう時は紅茶文化研究部らしく紅茶を飲みながら議論しない?クッキー焼いてきたんだけど。せっかくだからみんなで食べましょう」と紀佳。ちなみに紀佳の作るクッキーはそのまま百貨店で販売しても遜色ないと言われている逸品である。
「それじゃ、お湯沸かしてきますね」と部長。
「部長が席外してどうするんですか。後輩にやらせなさい。美代ちゃん、すまないけど、お湯沸かしてきて?薫ちゃんはポットとカップとソーサーの用意ね」
「はーい」
2人が立ち上がる。
「でもぉ後輩をパシリにするのは流石にどうかと思いますぅ」
「いいからなつきは議事を進めなさい」
「はーい」
ビクッとしながら部長が答える。一瞬耳が飛び出たような気もする。
「でも紅茶が入るまでは少し休憩にしません?なんだか疲れちゃってぇ。喉がイガイガする」
「まぁそれもそうね。斗姫、紀佳いい?」
「これにひっかきまわされて滅茶苦茶だからねぇ」と失神している雨海をこづきながら斗姫が答える。
「さゆりんがいいなら構わないけど」と紀佳。
「部長って疲れますね」
先代部長から後任に指名されたものの何をしていいのかさっぱり解らないなつきがぼやいた。
「まぁぼやいたってしょうがない。とりあえず一休みしましょう。それで慎司君は何やってるの?」
「あ、まぁいろいろと調べものを」
慎司はいつの間にか
「……まぁ良いわ。しばらく休憩ね」
小百合は突っ込んでも無駄だと思った。何をしているかはともかく慎司の仕入れてくる情報だけは確かだ、警察に捕まることさえしてなければ見逃してもいいだろう。面倒ごとは雨海一人で十分だ。
「……もう下校の時間じゃねぇか……」突然目を覚ました雨海が言うと「それでは会議は明日にしましょう……」となつきがぼやく。
「明日はこいつを昼間からここに縛りつけておきますわ」小百合が雨海を指さしながら言った。
「ちょっと俺にも人権というものがあるだろ」
「そんなものはない」小百合が語気を高めると雨海は諦観したような目つきに変わった。こういうときは碌でもないことを考えているはずだと小百合は過去の経験を思い出し身構える。明日も丁々発止の戦いの準備をした方がいいだろう。
結局、部員それぞれの思惑が交錯し文化祭の会議は明日に持ち越され部活は解散になった。
紅茶とケーキでまったりできない みし @mi-si
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