きみと桜の木の下で

花音

最初の扉  プロローグ

 春のうららかな日差しの中、僕とその少女は桜の木の下で出逢った。あまりにも無表情で、感情のない横顔を今でも覚えている。僕と少女を暖かな風が包み、桜の花びらが宙を舞った。


「……」


 ふと少女が僕の存在に気づき、目線が桜から移った。


「……あ、えっと、桜、好きなんですか?」


 僕は少女に見つめられ、思わず話しかける。


「はい。温かくて、優しくて、包み込んでくれるような感じがするので」


 いきなりの僕の存在に驚いた様子もなく、少女は相変わらず感情のない顔のまま質問に答えた。


「桜木さん、お待たせしました。ご案内します」

「はい、よろしくお願いします」


 僕の後ろから教師がやってきて、彼女に呼びかけると、ペコリと頭を下げて、少女は僕の前を通りすぎて行った。再び風が吹き、僕の周りを桜の花びらが包む。













 これは心のない少女と弱虫な僕が失ったものを取り戻していく物語。

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