ケンカ2

 仕事が終わり、車庫へ愛車のランクルヨンマルを納めた。


 もう大丈夫だとは思うが、一応まだ朝晩が寒いのでフロントガラスに霜が降りないよう、霜よけのガードを設置する。昭和53年式の車だからなのか、フロントガラスに霜が降りてしまうと溶かすことができず、朝の出勤時に苦労するので、冬の間は毎日こんな事をして車から離れる。


 今回の夫婦喧嘩はかなり激しいものだったので、今日もおそらく和解は成立しないだろうと半ば諦めの思いで門扉を開き、庭に入る。


 いつもはすぐに玄関へ向かうのだが、やはりちょっとまだ違和感がある。庭にあるメダカの水桶を覗くと水が減っていたので、あらかじめ汲んであるじょうろの水を少し足した。


 ちょろちょろと水を足したところで、この時期メダカは浮いてくることもない。先日池を設置した際に一番大きな水桶からメダカを捕り出すと、抹茶色な水の中に真っ黒いのが6匹いた。水が凍っても生きている彼らの生命力には恐れ入る。


 メダカの水桶は部屋の吐き出し窓の近くにある。


 じょうろに減った分の水を補給し、いつもの置き場へ戻す。


 ふと見上げると、部屋の掃き出し窓の遮光カーテンが開いた。


 まだストーブを強めに焚いているのか、少しばかり曇ったガラス窓の向こうにカミサンがおり、私に向かって手を振っている。


 「もしかして」の期待が頭をよぎる。



 玄関に入り、荷物と防寒着を所定の位置に片付けてから部屋に入ろうとすると、奥からカミサンが出てきた。ケンカ中はお迎えになど出てくるはずがないカミサンが、にこにこしながら出てきた。


 何と許してもらえたようで、お互いに謝罪をし、深々と何度もジャパニーズのお辞儀をし合い、今回の大喧嘩における和解は成立した。


 聞けば、にゃんちゃんが和解を促したのだという。


 にゃんちゃんとは、私とカミサンを結びつけてくれた屋久島生まれの真っ白なねこである。私と一緒に屋久島からこの家に来た。当初は犬派だったカミサンだったが、にゃんちゃんが来てからはねこ派となり、二人と一匹で様々な想い出を作ってきた。


 7年前に死んでしまったが、未だに彼女は私達の心の中にいて、夫婦の危機が訪れたときには救いの手を差し伸べてくれる。


 カミサンも病気をしたときには、にゃんちゃんに助けてもらったと言っている。


 更に今回良かったことには、今日が私の誕生日だったということだ。誕生日がこれでは可愛そうね、という気持ちになってくれたらしく、昨日は許せなかったが、今日になって許してあげなければと思ってくれたらしい。


 私とカミサンの紛争は、足かけ3日で解決となった。


 レベルが違いすぎる話だが、世界を混乱に陥れている紛争の終了、問題の解決という大問題に対する答えに共通するものはあるかもしれない。


 「お互いに許し合うこと」


 今回は、これで解決することができた。


 さらに大きなにゃんちゃんが、どこからともなくもう一匹出てきてくれて、何とか和解から問題解決へと導いてくれることを期待している。


 にゃんちゃん、頼むぞ


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