変な奴
君は面白いね、と、昔はよく言われた。
あなたは変だ、と、結婚してしばらくの間はカミサンも嘆いていた。
突然、誰もが思いつかないようなおかしな事を考え、実行してしまう。
仕方ない、これは私の本能なのである。
昨日夕方、バイト先の会社から、週初めの月曜日も仕事が薄く休みになると連絡があった。この電話で少し緩んだのかもしれない。
夜寝る前に突然、粘土をこねて、コーヒーカップを作ろうと思いついた。
少し前に、ねこだか何だかわからない、小さな置物をこの粘土で作り、販売しようと考えていたが、はじめたらその出来映えに絶望し面倒になってしまい、プロジェクトは鎮座していた。
こんなものを当初予定していたような高値で販売したらクレームが来て面倒な事になる、かといって安売りは避けたいのだけどな、という、相容れない、自分勝手な思いを解決する唯一の策が、自家用での製作、使用なのであった。
コーヒーカップはいくつかあるものの、焼き物な感じの、自然な物が欲しいと思っていた。出かける度に物色していたが、名の通った作家の物はとんでもなく高く、そう簡単に買えるものではなかった。
それなら自分で作ろうと、昨日夜に思いついて、はじめた。
買い置きしていたのは特別な素材で、こねたり混ぜたりすることなく、そのまま成型して乾燥させた後にオーブンで焼くことで、焼き物のように仕上げることができる。
これをこねて、コーヒーカップを作ることにした。
小学校5年生の時、世田ヶ谷の松沢小学校でやきものクラブに所属していたものの、素人同然の私にできる作品はそれなりのものである。
とりあえずできたが、コーヒーカップというよりは、スープボウルみたいになってしまった。まあいい、自家用だ。
「これ作ったの?久しぶりに出てきたわね」
20年以上も一緒に暮らしていればカミサンにも私の手の内は見え透いており、朝、何ともわからない形をした乾燥中の物体を見つけた彼女は、微妙な返しを私に投げかけた。
海外向けのYouTubeやウェブサイトだったり、今回の焼き物製作販売プロジェクトだったり、少し前まで熱を上げていた投資だったり、それに関連して新しく新調した中古のノートパソコンだったり、ヤフオクストアからYahooショッピングへの移行だったり、将来に向けていろいろと考えてはいるものの、ちょっとだけかじって宙ぶらりんになっている事柄がいろいろとある。
何分、運転の仕事が忙しくなってしまうと、何にも手が付かないのが現実なのであるが、一日も早く状況がコロナの前に戻り、心身共に余裕が出てきたところで、全ての事柄を上手くかみ合わせることができればなと思っている。
医者とか芸術家とかは、ちょっと変わった人が多いという情報も聞いたことがある。
いびつな形をしたコーヒーカップを見ながら、サラリーマンを辞めて屋久島へと旅立ったあの時の情熱を再び滾らせることができるなら老後も何とかなるのかも知れないと、自分勝手な淡い期待を抱いている。
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