旧車

 旧車というジャンルがある。


 昭和から平成はじめあたりの旧い車が、一部のマニアに人気だ。


 かくいう私も、昭和53年式の車に乗っている。


 だが、沼にはまると、出ることができなくなる。カッコイイからと安易に手を出さない方がいい。


 製造から40年も経過すると、車も当たり前の事ができなくなってくる。それらをオーナーがケアしてあげなければ、旧車は維持できない。

 

 例えばこんな風な症状に見舞われる。


 ウインカーが上手く点滅しない。

 鍵が回らない。

 エンジンがかからない。セルが回らない。

 あっちこっちから変な音がする。

 オイルや冷却水が漏れる。

 ボディーが錆びる。ドア、ボンネットが錆びる。

 車全体にじわじわと穴があいてくる。

 ドアが上手く開かない。

 雨の翌日、足元に水たまりができている。

 ギャップを超えると、頭に錆が落ちてくる。

 ドアノブが割れる。

 メーターの距離計が動かなくなる。

 クラッチがスカスカになり操作不能。

 マフラーが破けて爆音発生。

 マフラーから変な色の煙が出る。

 ボルトが途中で折れる。頭だけがもげてしまう。

 フレームナンバーが読めなくなる。

 などなど…


 併せて、部品供給との戦いとなる。

 現役車のように、旧車は部品の供給が完璧ではなく、製造打ち切りになってしまった部品は海外から取り寄せたり、オークションでとんでもない値段の物を買ったりしなければならない。

 部品がなければ、代替品を探したり、自分で作れないかを考えたりもする。


 頼りになるショップに巡り会えるかどうかも重要だ。

 場所と時間があるなら、自分で出来るようになれば、維持費用も浮く。

 あらかじめ部品をストックしておけば、その後が楽になるかもしれない。


 私は時々沼に落ち、数年に一度、どうにもならなくなる時期がある。部品を買い込み、工具や道具を買い込み、休みを修理、インチキレストアの作業につぎ込む。


 おそらくこの先何回も使わないだろう工具や、塗装時に塗装面をならすサンドペーパーなどを、冬眠前のリスの如く、何種類も買い込んだ。今の私のストレス解消の手段かもしれない。


 悪いことは言わない。先に不安があるのなら、旧車には乗らない方がいい。日本の車は、年式が少しだけ経過すれば、いい車でも安くなるシステムになっている。


 ちなみに先週末は、割れてしまったドアノブを交換し、リアのボディーの歪みを修正した。ボディーが歪んでいたので観音扉が長い間機能しなかったのだが、何とか復活させることができた。


 好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったものである。



 

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