センサー

 人生生きていれば、突然やってくる大きなストレスがいろいろとある。


 カミサンの病気もかなり堪えたのか、体重が8キロ減ってしまった。


 仕事やプライベートで車を運転する機会が多いが、これが壊れると、またストレスとなる。私の車は旧いので、今販売されている車のようにディーラーに持って行っても、部品がないとか、修理できませんとか言われる可能性が高い。何度かディーラーで困ったことになった状況を経験しているので、様々な工場を転々とした挙げ句、今はバイト先の会社の併設工場にお願いしたりしている。


 昨日待機からトラックを動かそうとメーターパネルを見ると、警告ランプが点灯していた。今までもブレーキが効かなくなったり、クラッチが切れなくなったり、エンジンがかからなくなったり、デフの中が壊れたりと、結構とんでもない故障を経験しているが、今回はちょっと状況が違う。故障とは言え、コンピューターが絡んでいるのだ。

 

 自家用車は言うに及ばず、今まで仕事で乗ってきたトラックも古い物が殆どなので、何とか仕組みがわかっており、壊れても納得できるし、どうすればいいのかはわかっている。


 しかし、今乗っているトレーラーのヘッド、頭の部分は、バイト先の会社が被災し、その補助で購入した、比較的新しいトラックなのだ。今の時代のトラックは、ディーゼルの排気ガスを尿素と混ぜて排出し、低公害化するなど、電子制御が満載だ。


 今回、これ絡みのエラーが出てしまった。


 説明書を見ると、「ほっぽっておくと動かなくなるので、早く点検してね」とある。


 仕事はしなければ給料が減るし、あまり傭車先にはストレスを与えたくないし、さて、どうするか困った。


 会社の工場の工場長に電話すると、よくあることで、診断機を繋いでみないと原因がわからないので、出来るだけ早く持ってきてね、診断機は工場にあるからね、故障の場所によっては、エンジンがかからなくなることもあるから気を付けてね、とのこと。今の車はこうやって直すのね、と、少し納得した。


 ネットにも情報があり、警告ランプが点灯してからも走ることはできて、200㎞位走ると警告音が鳴り出すらしい。この仕事は多くても一日120㎞位しか走らないので、今日は仕事ができるかもしれない。


 最後に会社に電話し、警告が出たので、仕事終了後に工場に入庫し、診てもらいますと報告した。幸いにも、今日はそれほど忙しくなく、日がある内に帰庫できそうだったので助かった。コンプライアンス的にはアウトだけど、今日だけはエンジンを止めないようにして、仕事をする事にした。


 仕事は早く終わり、無事工場に入庫した。この会社のシステムは凄い。工場長が診断機を繋ぐと、NOxセンサーの異常であることが判明。工場長自ら部品屋さんに電話し、部品の在庫を確認すると、注文&引き取り予約をして、ディーラーに取りに行く。ディーラーはすぐそこなので、30分もしないで、部品を持って帰ってきた。


 それを工場長自らが取り付けてくれる。私は一部始終を目の前で観察する。NOxセンサーを取り換えるにも、この排気ガスのシステムは高温になるため、コア部分にアプローチするには、沢山のボルトを外し、高温注意の為に取り付けられているガードをいくつか取り外す必要がある。


 そんなに古い車ではないのに、ボルトは、簡単には外れないものがあり、三本ほどが外れずにちぎれてしまった。実はこの前の三連休、自分の車のインチキレストアを開始し、早々に同じ状況になり、ボルト六本を処理するのに、何とまあ二日くらいかかってしまったという状況があったので、興味深く観察をさせてもらった。


 工場にはいろいろな道具がある。さすがだ。折れたボルトをバーナーであぶる。ネジ部分が出ている状態なら、バイスプライヤーでつまんで回すと出てくる。出ていない場合は、折れたのとは逆側にナットを置き、半溶接で折れたボルトと新しいナットを溶接する。ちょうど、新しいボルトを裏側に作るようなイメージだ。溶接したナットを回すことで、中で折れたボルトを無事に取り出すことができた。


 新しいセンサーを観察すると、さすが、Made in Germany だった。かまぼこが入る位の小さな段ボール箱に入った部品だったが、この部品だけで私の一週間分の稼ぎが飛んでしまうらしい。工賃も入れたら、かなり高い整備代金となってしまう。


 今回はトラックだったけれど、今の車は電子制御が多く、あっちこっちにセンサーがついている。壊れると修理は効かず、高い部品と取替になる。この先、自動運転とか言われているが、これなんかセンサーだらけだ。作るのはいいけど、修理が大変だぞ。


 それにしても、とんでもないストレスだったのに、修理が早くて助かった。一般的には、修理の依頼から修理完了までの間には沢山の人が関わるので、時間もお金もそれだけ必要となってしまう。会社が大きければ大きいほど、沢山の人が関わることになる。


 今お世話になっている運送会社は、その点すばらしい。私と工場長と部品屋さんで修理ができた。全部入れても2時間もかからなかっただろう。ファンタスティックである。


 今の車の修理は機械で診断して、言われた部品を新品に取り換えて、費用はとんでもなくて、と、私にとってはあまり面白くなく、いいことがない。既にナビ自体が嫌いなので、旧い車ばかりに目が行ってしまう。


 しかしどっこい、旧車も本気で乗りはじめると、センサーどころではないお金がかかり続けるので、結局は、保証付きの日本の、今売れている新車を買うのが得だし、お金もかからないし、いいんだよね、ということになるのだろう。維持にストレスがかからないのが、結局は一番お得でいいのである。


  

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