精神科へ
「寝られない」という状況が、よくわからなかった。
私は今でもそうだが、睡眠時間が比較的短い。若い頃は4時間ほど、今では少し長くなったが、それでも6時間弱位である。
4時間の頃はというと、やはりこれだけでは足りないのか、電車の中や駅のホームなどで、睡眠を補充していた。満員電車などで身体が固定されれば寝てしまうし、駅のホームに並んでいても立ったまま寝てしまい、膝がかくんとなって目が覚める、なんて技もできた。上手く座れようなら最後、降りる駅寸前まで、寝ることができた。不思議なことに、乗り過ごすことは殆どなかった。
油断をすればすぐに眠くなる。昼食後も眠いし、講演などを聴くとすぐに寝てしまい、内容が頭に入らない。眠り病ではないかと思う事がよくあった。今でもそう思っている。
カミサンは脳の静脈の血栓症を発症し、複視の後遺症が残っている。徐々に良くなると言われているが、退院から二ヶ月以上が経過するも、症状はそれほど改善されない。見え方以外にも頭の中に霧がかかったようになっていて、ぼうっとするのだそう。マヒや痺れなどではないから、脳の大病を煩った後遺症の中でもいい方なんだよ、と、私や友人に励まされているが、現在もなかなか状況を受け入れられずにいる。
仕事への復帰を模索していたある日、カミサンは突然眠れなくなってしまった。眠れない、ぼうっとする、身体が動かない、何もできない、何も食べることができない、という症状になり、苦しみはじめた。
一番始めに高血圧で診てもらったかかりつけ医から睡眠薬を処方されていたので、これを飲み始めた。しかし、最初の数日は少し眠れたが、その後はまた、眠れなくなってしまった。
眠れない、食べられない、何もできない、テレビもスマホも見ることができない、という、信じられない状況になってしまったカミサンは、症状から自分がうつ病を発症してしまったと察し、自分で精神科外来に電話し、診察を予約した。
私も同行し、少しハードルの高かった精神科を受診、電子カルテにカミサンの症状が打ち込まれ、何種類かの薬が処方された。ドクターとの相性が心配だったが、話をよく聞いてくれる、いいお医者さんでよかった。
その薬を飲んで寝た翌日、カミサンは朝、起きてこなかった。寝ることができないという苦しみの症状から解放された。
私もカミサンも精神科の薬に対しては、中毒性があり、あまりよくないものだという印象があった。一方で、年々改善され、かつての印象はぬぐい去られているという事も知っていた。
数粒の薬が、一晩で、大事なカミサンの人生を救ってくれた。
死にたい、私なんかどうでもいい、などと言い、仕舞いには、
「大丈夫、死ぬこともできないから」
と苦しみ、もがいていたカミサンが、精神科から処方された薬によって、一晩で改善へと歩み始めた。
血栓が脳の太い静脈に詰まり、集中治療室に4日もいたのだから、脳はそれなりのダメージを受けているはずだ。お医者さん、友人、皆様の力を借りながら、何とかこれからも人生を生きていけるようにサポートして行きたい。
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