インチキ

 通販で買った塗料が届いた。


 家には、中国の通販で買った、ベルトサンダーという、錆を落とす道具も届いていた。


 昨日はカミサンを病院に連れて行かねばならなかったので、急遽今日の夜配達にしてもらった、これまた下塗りの塗料やら仕上げのクリアーやら硬化剤やら希釈用のシンナーやらが入ったちょっと危ない荷物も、無事に届いた。


 製造から40年以上が経過している私のランドクルーザーは錆びている。今日も見ると、助手席の上に錆びた鉄片が落ちていた。屋根の付け根の所が錆びていて、走ると落っこちてくる。


 何度か自分で直しているが、先日陸運局でご指摘を受けたので、今回もたぶん15年ぶり位に、板金塗装をしようと思い、材料一式を通販で買い揃えた。


 こんなもん、どう考えたって素人が買うもんじゃない。


 普通は車がへっこんでしまったり、錆びたりしていたら、専門の業者さんやディーラーに持って行って修理をお願いするだろう。


 この車の場合、それをやってしまうと、かかる費用は青天井、いくら請求されてもおかしくない状態なのである。


 だから、維持したいのなら自分でやらねばならない。


 幸いにも、我が家は袋小路の奥にあり、隣近所もかなり広々としているので、場所はあるし、塗装やエアーの工具を動かすためのコンプレッサーを、何とか使うことができる。


 だけど、道は険しい。


 鉄板を買い、FRPで型を取って、鉄板からパネル部品を叩き出さねばならない。そして、その部品を取り付ける前に錆を落として、溶接して、さび止め、パテで形を整えて下塗り、本塗料、クリアーを吹き付けるのだ。


 サーフェイサーと呼ばれる下塗りの塗料と、関西ペイントのPG80という本塗りの塗料は二液性、自動車用の特殊なものなので、硬化剤と混ぜる必要がある。きちんと計量し、専用のシンナーで薄めて、専用の紙で濾した後、エアガンで吹き付ける。


 何でこんな面倒くさい事をやっているのか自分でもよくわからないが、とにかく、車を直さねばとの一心で、覚えた術なのだ。


 好きこそものの上手なれ、ではないな、上手ではないから、ちょっと違う。


 趣味もあまりやる気がないので、今はこれを考えている時が、ストレス解消になっているのかもしれない。カミサンからも、「あたしの事で大変だろうから、好きなことをやってね」と言われている。


 O型の典型的な性格上、こだわる所はあっても適当なので、仕上がりなんかはどうでもいい。あと15年位、車検場で怒られない程度に直れば、見てくれなんてどうでもいい。


 屋久島の時のガイドはインチキガイドだったけれど、今回も基本的に同じなので、同様のブランド名を継承して、一連のプロジェクトをインチキレストアと名付けよう。


 また、ご報告差し上げます。



 

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