145
医者から帰ってきたカミサンは、ぐったりしていた。
診察室に入る前に血圧を測定したところ、やはり200を超えていたらしい。
心電図や尿の検査をし、血圧降下剤をはじめ、数種類の薬をもらって帰ってきた。検査があったので、医者代が6千円もかかってしまったと嘆いていた。
食欲もなく、夕飯も食べられないようだったが、薬を飲む手前何とか無理をして茶碗半分のご飯を食べ、血圧降下剤を飲んだ。
大好きなスマホも見たくない、音楽も聴きたくない、もう、何もかもやりたくない、左の耳までよく聞こえなくなっている、こんなの生まれて始めてだと嘆いていた。
私はそれ程の大病をしたことはないけれど、高校生の時にインフルエンザにかかった時は、かなり苦しかった。今のカミサン同様、本当に何をする意欲もなくなり、何も食べられなくなる。母親が買ってきてくれたアイスクリームをかろうじて食べ、医者から処方された薬を無理やり飲み、何とか寝て、汗をかいたら、段々と良くなってきたのを覚えている。
「大丈夫だ。こんなに苦しいのは一生に何日もないぞ。自己治癒力で人間は自分の病気を治せるように出来ているんだ。薬の力を借りれば、更に万全。一晩寝ればきっと良くなるよ」
かなり辛そうだったので、こんな言葉をかけ、夜の台所の仕事も手伝い、カミサンには早く寝てもらった。
「仕事してきて疲れているのに、悪いわね」
「そんなことはないぞ」
二人で家事を終え、カミサンはベッドで寝た。
私が部屋でパソコンに向かっていると、寝たはずのカミサンがやって来た。
「今さ、血圧計ったら、こんなだよ。大丈夫かな?」
そう言いながら、カミサンは手を差し出した。
手首に巻き付いている血圧計を見ると、血圧は145になっている。
「お医者さんは、下がるまでには数ヶ月かかるかも、って言ってたんだけど」
「薬が効いてきたんじゃないか?しばらくは上がったり下がったりするだろうから、きちんと毎日計って、様子を見ていけばいいよ」
自己治癒力なのか、薬なのかわからないが、とりあえず血圧が落ち着いたのは良かった。カミサンらしく今後は、医者から渡された血圧管理ノートではなく、自分で探してきたアプリに毎日血圧を入力して行くから、と言っていた。
何とかスマホをいじっているし、わざわざ報告に来てくれたので、峠は越えて、何とか大丈夫なんじゃないかな、と思った。
今朝、トイレに起きてきたカミサンは、万全ではないにせよ、何とか正気を取り戻していた。パートにも行くとのことで、一安心。
これからは塩分を控え、野菜を食べ、体重を減らすように努力し、健康に暮らして行けるよう、一層の努力をすることにしよう、というのが、二人で出した結論である。
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