あらいぐまラスカルとスペイン風邪


 カミサンがWOWOWを契約してくれたので、かつての名作「あらいぐまラスカル」を見ている。


 アメリカ中西部ウィスコンシン州の小さな街に住むスターリングノースと、あらいぐまラスカルの物語だ。私達夫婦は動物好きなことや、このアニメを製作した日本アニメーションが、実は私の実家の近くにあるということ、CG全盛の今にあっても、決して色褪せない、美しい、古きアメリカの街の描写などが気に入って、毎日一物語ずつを見るのが日課だ。


 昨日の話の中で、スペイン風邪の話題が出ていた。作者のスターリングノースは1906年の生まれである。スペイン風邪の流行は、1918年から1920年と言われているから、日本で言うなら小学校から中学校へ入るあたりの多感な時期に、この人類史上、世界最大のパンデミックを経験し、物語の中にそれを描いている。


 その様子は、実に驚くべきものだった。100年以上が経過して、再び世界を脅威に陥れている新型コロナウィルスのそれと全く同じなのである。


 街はロックダウンとなり、誰も歩いていない。学校ももちろん休み。集まる人は皆、マスクを着用している。100年以上前、アメリカ中西部の小さな街にまでウィルスはやってきて、人々の平和な生活を破壊した。


 私は40年以上前、1977年の放映当時も見ていたが、このシーンを見て特に感じることはなかったと記憶している。その後も何回か見ているが、同様だ。今回、このような状況になってしまった事で、私達はこの物語から、別の意味での重要な教えを与えてもらっている。


 アメリカ国内では、スペイン風邪で、50万人もの人が一気に亡くなった。これは戦争や災害などを含めても、短期間でヒトを死に陥れた要因の、歴代第一位。


 歴史は更に、私達に大切な事を教えてくれる。


 スペイン風邪は第三波まであり、第一波はアメリカとヨーロッパで大流行、第二波は、ほぼ世界中で同時に起こり、病原性が更に強まり重篤な合併症を起こし、死者が急増。第三波は、第二波と同様、世界中で大流行し、医師、看護師の感染者が多く、医療崩壊してしまい、感染被害が拡大した。そして終息するまでには、何と三年以上の月日がかかっている。


 スペイン風邪は第一次世界大戦中ということもあるので、一概には比べきることができないのかもしれないが、それにしても恐ろしい事に変わりはない。


 日本はこれから人の流れを含め、段々と制限を解除していく段階だが、この歴史、悲しい事実を一人でも多くの人が知り、常に頭に入れ、慎重な行動、対応を取って行く必要があるだろう。人間は、知恵や知能が発達しようとも、膨大な時間と大金をかけて武器を開発し、揃えようとも、決して自然の摂理には敵わないと言うことも、この機会に併せて再認識しておいた方がいい。



追伸

 最後に、この事実を作品として100年後の後世まで残してくれた、スターリングノース、日本アニメーション、WOWOW、その他全ての関係者の方々に、この場を借りて感謝とお礼を申し上げます。



 

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